英語の洋書と絵本 ANNIE'S BOOKSHELF

 MY BOOKSHELF 10

91-100

Where the Crawdads Sing

Arf (Bowser and Birdie)

Little Fires Everywhere

The Facebook Effect

Dog on It (Chet and Bernie)

Bad Blood

A Dog's Purpose

Educated

The Underwriting

The Joy Luck Club

Where the Crawdads Sing

(ザリガニの鳴くところ)

Delia Owens

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

自然に抱かれ孤独に生きる "湿地の少女"の 謎を描いた感動作


あらすじと感想 

ノースカロライナの湿地で町のスターフットボーラー、チェイスの死体が発見された。容疑がかかったのは、 "Marsh Girl" と噂されていたカイア。6歳で母親が家を出ると姉兄たちや父親も家を去り、湿地の小屋に一人残された彼女は貧しく孤独だった。町の人々の蔑むような視線を避け、沼の自然が彼女の生きる場所となった。貧しい白人の少女を支えたのは商店を営む黒人のジャンピンで、彼女は自分で捕った貝や魚を売ってボートの燃料や食料を得ることを学んだ。

 

学校に行ったのは1日だけ。しかし、兄の友達だったテイトが読み書きと計算を教え、彼女は書物によって自分の世界を広げていく。恋心を抱くようになる二人だが、葛藤の末テイトは大学進学のためカイアの元を去ってしまう。その後カイアに近づいてきたチェイスも又他の女性と結婚し、彼女は再度裏切られることとなる。そしてカイアは殺人容疑で逮捕された。

 

物語は、チェイスの変死体が発見された1969年の捜査のシーンと、カイアの生い立ちを幼少から追っていくシーンとを交互に描きながら進む。カイアの母親が夫の暴力に耐えかねて家を出た1952年のアメリカ南部の小さな町に、まるでタイムスリップしたような錯覚を覚えながら読んだ。そしてクライマックスは終盤の法廷シーン。 町の人々の目撃証言、無くなった貝のネックレスの謎、カイアのアリバイ・・・。立ち上がった人権派の弁護士は、カイアの無罪を勝ち取れるのか。名作の "To Kill a Mockingbird" (アラバマ物語) を思い出した。

 

2018年に発行されたベストセラーで、著者はアメリカの動物学者の女性である。湿地の描写が緻密で、その圧倒的な自然描写が単なるサスペンスドラマの域を超え物語に厚みを持たせる。残念ながら私の英語力では動植物の専門用語に全く太刀打ちできないが、それでも神秘的な自然の息吹に包まれて生きる少女の強さと悲しみが十分伝わってきた。奇妙な本のタイトル "Where the crawdads sing" (ザリガニの鳴くところ) は  "茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所" で、そここそがカイアの生きるところだ。最終章、カイアの死後に彼女の小屋からチェイスの身に着けていた貝のネックレスが発見され、物語は閉じる。

 

Chapter 17 より~"ザリガニの鳴くところ" とは?

 "Well, we better hide way out there where the crawdads sing. I pity any foster parents who take you on." Tate's whole face smiled.

 "What d'ya mean, where the crawdads sing?  Ma used to say that." Kya remembered Ma always encouraging her to explore the marsh: "Go as far as you can---way out yonder where the crawdads sing."

 "Just means far in the bush where critters are wild, still behaving like critters. Now, you got any ideas where we can meet?"

 

今回は初めて息子からの薦めで思わぬ感動作に出会えた。なんと、これが記念すべき100冊目。目標だった100冊に到達するのに10年かかったがやっと達成できた!! 今はちょうどアメリカ大統領選挙 (トランプvsバイデン) の開票中。洋書を通してアメリカは随分身近に感じるようになった。50州もしっかり頭に入った。今まで諦めずに頑張った自分に拍手!! 次は200冊を目指そう!! (^^)/

2020.11

ノースカロライナ州 (Wikipedia より)

Arf : A Bowser and Birdie Novel

Spencer Quinn

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

少女 Birdie と愛犬 Bowser によるミステリー仕立ての児童書


あらすじと感想 

少女 Birdie と愛犬 Bowser が Mama と Grammyと暮らすのは、ルイジアナ州南部の街。ある日家に空き巣が入り部屋が荒らされると、近くの Richelieu 家にも同様の空き巣が入りパールのネックレスが盗まれたという。不審に思った Birdie と Bowser は自分たちで事件を探り始める。知り合った女性 Drea の死体が沼の底で発見されると、彼女の死は刑事を殉職した Birdie の父親が手掛けていた未解決事件と関係していて・・・。

 

Chet and Bernieシリーズ "Dog on It" (同ページ下部参照) が面白かったので、同じ著者による児童書版ミステリー Bowser and Birdie シリーズを選んでみたら、これまた大正解! "Arf" はシリーズ2作目で (1作目 ”Woof" が手に入らず)、調べたところ今回の主人公? Bowser は保護犬らしい。Bowser も警察犬?の Chet 程とはいかないまでも、 Birdie と家のセキュリティは自分の担当としっかり心得ていて頼もしい。もちろん今回もストーリのナレータ―を務めているが、何せ普通の犬ゆえ度々横道にそれるのはご愛敬。

 

今回の舞台はアメリカ、ルイジアナ州南部の Cajun (ケイジャン) country という地方で、Acadiana (アケイディアナ)とも呼ばれる。湿地帯が広がり、bayou (バイユー:ミシシッピ川三角州地帯などに見られる小川) が街を通り、Grammy が経営する "Gaux Family Fish and Bait" ではボートによる swamp tour (湿地帯巡りツアー) を行っている。Chet and Bernie シリーズでの砂漠の風景も魅力的だったが、今回もアメリカ南部に広がる自然が新鮮だった。

 

 

Chapter 1より~僕たちはケイジャンカントリーにある小さな湿地帯の街に住んでいる。

  First off, we live in St. Roch, the nicest little swampland town I know, with a bayou running right through the middle. (略) Maybe I should have started with Gaux Family Fish and Bait, our family business and the best family business in all of Cajun country, (略) especially the swamp tour part, and me and Birdie help out.

(略)

"Now you've got a food truck?"

"Best food truck in Acadiana," Wally Tebbets said. 

 

Chapter 2より~家のセキュリティ担当はもちろんぼく Bowser!

Who was in charge of security at 19 Gentilly Lane? Me!

 

Chapter 4~他人の家の庭でマーキングをしてしまう Bowser。

Then you'd have raised you leg and marked that beautiful flowering bush, marked it to the best of your ability, meaning up, down, sideways, and even inside out--one of very best techniques, which often ends with me in a tangle, but this time did not.

 

Chapter 8より~ハムサンドがあったのでしれっと頂いてしまった。

By that time, I'd located the ham sandwich, (略) She (略) then noticed me, standing actually quite close to her, the ham sandwich in my mouth, impossible to miss.

 

前半は Birdie と Bowser を取り巻く日常が淡々と続きミステリーらしさが全く感じられないのだが、後半次第にその日常の小さな点と点がつながっていく。それでも事件解決のなぞは最後の最後まで明かされず、終盤夢中になってページをめくった。今回も犬の視点による語り口が健気で頼もしくて可笑しくて、すっかり著者 Spencer Quinn のファンになってしまった。

2020.8

ルイジアナ州(Wikipediaより)

Little Fires Everywhere

Celeste Ng

★★☆  英語難易度

理想の高級住宅街に住む富裕層一家はなぜ火事で家を失ったか


あらすじと感想 

オハイオ州、クリーブランド郊外でリベラルな理想の街とされていたシェイカー・ハイツで、一軒の邸宅が火事になる。焼け落ちたのはリチャードソン家で末娘は失踪した。普段から問題行動を起こしていた彼女が犯人だと家族は確信するが、一家に一体何が起きたのか、時をさかのぼる。

 

リチャードソン家は弁護士の父親、地元紙のジャーナリストの母親、高校4年から1年生までレキシ―、トリップ、ムーディ、イジーの年子の4人の子供のいる裕福な白人家庭であった。リチャードソン夫人は所有しているアパートを安く貸し出していて、そこにシングルマザーでアーティストのミアと高校生の娘パールの貧しい親子が引っ越してくる。子供たちは地域の同じ高校に通いお互いの家を行き来し、リチャードソン夫人はミアを家政婦として雇うようになる。パールはリチャードソン家に入り浸るようになる一方で、反対にイジーはミアに惹かれ彼女のアパートに居場所を見つけていた。

 

さて、リチャードソン夫人の親友夫妻は待望の養子を受け入れることになった。ところが、ミアの同僚で赤ん坊の母親である中国女性が我が子を取り戻したいと裁判に発展し、どちら側が親権を取るべきか、シェイカー・ハイツの住民たちの一大関心事となっていった。この件をきっかけにリチャードソン夫人はミアに不信感を抱いて彼女を詮索し始め、パール出生に関わる重い過去を突き止める。そんな中、長女のレキシ―は親に内緒で中絶、パールとトリップは恋人関係に発展。両家族の関係は完全に壊れて、ついにリチャードソン夫人はミア親子追い出すこととなった。(以上あらすじ)

 

2017年発刊後長くベストセラーとなり、2020年にはドラマ化され配信、朝日新聞の "GLOVE" でも紹介されていた。時代設定はクリントン政権の1990年代で、シェイカー・ハイツは実在する街である。1980年生まれの著者は香港からの移民2世で、10歳の時に実際にシェイカー・ハイツに移住している。本書は自身の見てきた人間模様を小説化したものだろうと想像する。

 

富裕層の住むシェイカー・ハイツは計画的に造られた理想郷のような高級住宅街で、景観を維持するためにさまざまな規律も定められている。リチャードソン夫人自身もシェイカー・ハイツで育ち、大学卒業後も一流ジャーナリストになる夢より生まれ育った街で良き妻良き母になることを優先させた。そして、富裕層として善い行いをするよう親に教育され、相続したアパートを恵まれない人に安く貸し出すことで社会貢献していることを自負していた。

 

Chapter 2より~家の芝生の手入れを怠れば罰金が課される。

(略),they learned that an unmowed lawn would result in a polite but stern letter from the city, noting that their grass was over six inches tall and that if the situation was not rectified, the city would mow the grass -- and charge them a hundred dollars -- in three days.

 

Chapter 6より~リチャードソン夫人は規律に従い計画的に人生を歩んできた。

She had been brought up to follow rules, to believe that the proper functioning of the world depended upon her compliance, and follow them -- and believe -- she did. She had had a plan, from girlhood on, and had followed it scrupulously: high school, college, boyfriend, marriage, job, mortgage, children.

 

ところが、完璧な街に暮らす完璧なはずの家族の実態は偽善に満ちていた。リチャードソン夫人が自負している親切心は上から目線で押しつけがましいのに、施してあげている感が透けて見えていることに本人は気づいていない。そして、相手が自分の意に沿わないとわかると、途端に嫌悪感を顕にするのだ。裕福な家庭で不自由なく育った子供たちにも、人間的成熟が感じられない。長女のレキシ―はエッセーをパールに頼んでエール大学に合格するし、都合のいい時だけ彼女を利用しているような感じがしてならない。(ちなみにレキシ―を妊娠させたボーイフレンドはプリンストン大だ。こんなぬるま湯につかったような子供たちが、裕福ならエリートへの道を進むんだなと思った。)

 

富めるものと弱者が価値観を共有させることは到底困難で、二つの家族の間で小さな火種がくすぶり出し、ミア親子を追い出すことになったリチャードソン一家は、結局の娘の放火によって自らの家を失ってしまった。裁判で親権を勝ち取った親友夫妻の子供が実母に連れ去られ、中国に逃走してしまったというおまけも加わる。

 

経済格差、人種、親権、代理母などさまざまな問題が練られたプロットの中で、アメリカの富裕層の生活を興味深く覗いた。しかし、好きになれるようなキャラクターは登場せず、個人的にはかなりうつな気分になった読書だった。(英単語が難しい割には文章が読み易くて救われた。)オハイオ州クリーブランドは最近のラストベルトのイメージが強かったのだが、最後にネット検索すると、シェイカー・ハイツの家々は想像以上の豪邸だった。私には自分で手入れできるくらいの我が家で丁度良い。(^^)

2020.8

オハイオ州(Wikipediaより)

The Facebook Effect: The Inside Story of the Company That is Connecting the world

(フェイスブック 若き天才の野望)

David Kirkpatrick

★★☆  英語難易度

Facebookの誕生と発展を記したドキュメンタリー


あらすじと感想 

2004年ハーバード大2年で19歳のマーク・ザッカーバーグが在学中に立ち上げたSNSサイトは、シリコンバレーで巨大IT企業へと発展する。世界をつなぐ "Facebook" がどのようにして創り上げられたか、元フォーチュン誌の記者の取材を基に記された2010年発行のドキュメンタリーである。最近読んだ "The Underwriting"、"Bad Blood" (同ページ下部参照)でシリコンバレーのスタートアップに興味をもったので、今回は本書を選んでみた。

 

同じくノンフィクションの "Bad Blood" では、2003年19歳のエリザベスがスタンフォードを中退して "Theranos" を立ち上げていて、シリコンバレーで時期を同じくして両スタートアップ企業が始動していたことになる。片や "Theranos" が砂上の楼閣に終わってしまった一方で、"Facebook" を "GAFA" の一角を成すまでに成功させた若きCEOの人となりが興味深かった。

 

ハーバードの寮で立ち上げた当初の "TheFacebook" の利用者が瞬く間に広がり、シリコンバレーに移り仲間たちとサイトの運営を始めていく前半は、以前観た2010年公開の映画 ”The Social Network" を思い出しながら読んだ。映画では、ザッカーバーグは女の子にもてないオタクで、パーティーで騒ぐ学生や、友人とのトラブルなどの一面が強調されているように映った。いや、本書の中でも彼は確かにオタクだ。服装には頓着なく、部屋は汚い。会話中は聞いているそぶりも見せず黙っていて、本当に興味のある話題にのみ堰を切ったように意見するというのが彼のスタイルだという。しかし、映画で受けたイメージと違って、その天才の素顔が一企業を成功させた人物としてもっとずっと好意的に描かれていると感じた。

 

Chapter 1 より~Tシャツにダブダブのジーンズ、冬でもサンダルが彼のスタイル

His uniform was baggy jeans, rubber sandals -even in winter- and a T-shirt that usually had some sort of clever picture or phrase. (略) He could be quiet around strangers, but that was deceiving. When he did speak, he was wry. His tendency was to say nothing until others fully had their say. (略) If you said something stimulating, he'd finally fire up his own ideas and the words would come cascading out. (略)

  Girls were drawn to his mischievous smile. He was seldom without a girlfriend. They liked his confidence, his humor, and his irreverence.

 

Chapter 5 より~ザッカーバーグは人の話を聞いていないのではない

People often think Mark Zuckerverg isn't listening to them. He has a way of saying nothing and appearing uninterested. He dose not offer the body language or nods or other conventional conversational signals that tell someone he's listening. However, that usually doesn't mean he isn't listening. (略) One the other hand, there are times when he really doesn't listen. It happens when he's either bored or very uncomfortable. On those occasions, he will repeatedly, at fairly random times in the conversation, simply mutter, "Yeah". This distinction is only apparent to people who know him well.

 

後半はIT企業としての戦略など、ビジネスとしての成長過程の詳細が記されている。規模の拡大に伴い幾度となく巨大企業から買収の話を持ちかけられ、その額はどんどん跳ね上がっていくのだが、ザッカーバーグは決して誘いを受け入れない。それは、お金目的でなく、世の中のために人をオープンに繋げたいという彼にとっての Facebook の存在意義が揺らぐことがないからだ。大企業の大物にも屈しないこの若きCEOは、根が善人なのだろうなと感じながら読んだ。本書は成功体験を記したビジネス指南書。IT関連も少し読み慣れてきたものの、相変わらずの膨大な登場人物に悪戦苦闘した。物語として読むには、悪役が登場する "Bad Blood" の方が楽しかった。(^^;)

2020.7

Dog on It : A Chet and Bernie Mystery

(ぼくの名はチェット)

Spencer Quinn

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

探偵バーニーと相棒犬チェットが活躍するミステリー


あらすじと感想 

私立探偵のバーニー・リトルと相棒の警察犬 (になり損ねた) チェットのところに、女子高生失踪事件の依頼が来る。単なる家出なのか、それとも事件に巻き込まれたのか、バーニーとチェットの調査が始まった。物語のナレーターはチェット。難しい話は分からなくて、他のことに気が散ったり、気づかぬうちに吠えていたり、はたまた寝てしまったりするのだが、バーニーに対する信頼は絶大、全力で彼をサポートする。ストーリーを語りながらついつい自慢げに "me and Bernie" と繰り返してしまうチェットだ。

 

Chapter 1より~チェットとバーニー (実はバツイチ) は名コンビ。

The door opened and in, with a little stumble, came Bernie Little, founder and part owner (his ex-wife, Leda, walked off with the rest) of the Little Detective Agency. (略)

  We went outside, me and Bernie.

 

Chapter 2より~跳躍力が抜群すぎるのが難。チェットは警察犬学校を卒業し損ねた。

"Chet is a trained police dog after all." (略)

"Graduated first in his class at K-9 school."

   That was stretching it a little, since I hadn't actually graduated, (略)

I'd been the best leaper in K-9 class, which had led to all the trouble in a way I couldn't remember exactly, (略)

 

妻と幼い息子は家を出てしまうし、普段はくだらない離婚や浮気の調査ばかりで冴えない感じのバーニーだったが、実は West Point (ニューヨークにあるエリート陸軍士官学校) 出身だったことが記者のスージーの取材で明かされる。(私の中でバーニーのイメージが急にイケメンのエリートに昇格!)  チェットをいつも傍らに、聞き込みの地道な調査が続くが、やがてカーチェイスや撃ち合いのシーンも登場し、事件解決に導いていく。バイカーや悪党どもにひるむこもとなく、バーニーはなかなか腕っぷしも強いようだ。

 

Chapter 4より~バーニーは West Point 出身だった。

"He mentioned you'd gone to West Point."

"Uh-huh."

"That's quite an accomplishment, just getting accepted." ()

"And what was the path that led you here from West Point?" ()

"I like the desert, "Bernie said. "The American desert."

 

desert、valley、canyon、cactus・・・物語の舞台は、その描写からアリゾナだと想像する。チェットのシルエットを描いた表紙絵が実に魅力的だ。地平線へ伸びる砂漠道を走るバーニーの愛車ボルシェ。その shotgun (助手席) から、チェットがまっすぐ前を見つめている。

 

Chapter 4より~裏庭からキャニオンへ。うっかりするとサボテンのトゲだらけ。

We went out the back door, through the yard, out the gate, into the canyon.(略)

Ow. I ran right into one of those skinny cactuses, the kind with the needles.

  Back in the kitchen, Bernie removed the needles with tweezers, one by one, starting with my nose.

 

発行は2009年。この名コンビが事件を解決するミステリーシリーズの第一弾だ。先月読んだ "A Dog's Purpose" の小説用(?)っぽい犬と違って、チェットが限りなくリアルに近いところがいい。ミステリーと犬の魅力が1度に楽しめて満足感も2倍だ。英語は読み易いが、一応ミステリーなので筋ををきちんと追っていくことは必要。(チェットにつられて横道にそれないように!)

2020.6

アリゾナ州  (Wikipediaより)

Bad Blood

Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup

(シリコンバレー最大の捏造スキャンダル全真相)

John Carreyrou

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

シリコンバレーで血液検査ベンチャーを立ち上げた若き女性起業家の嘘


あらすじと感想 

エリザベス・ホームズはスタンフォード大学化学工学科の2年を中退し、2003年19歳でベンチャー企業 "Theranos" を立ち上げる。その業務内容は、安価で迅速な血液検査システムを構築するというもので、指先から採取した少量の血液のみで判定が可能な小型の検査機器の開発を進めた。シリコンバレーで起業家としてのカリスマ性を持ち合わせるエリザベスは、多くの投資家らから多額の資金を調達、大手ドラッグストア―と提携し、取締役には米国の大物たちが名を連ねるまでに会社を成長させる。しかし一方で、その実態は当初から虚偽で固められていた。開発した検査機器は正常に機能せず、外部に誤った検査結果を報告。会社のナンバー2でエリザベスの歳の離れた恋人サニー・バリワニと共に、社内では虚偽を隠ぺいするため徹底した秘密主義体制を敷いていた。疑問を持った社員の意見は決して聞き入れられることなく、彼らは次々に会社を追われることとなる。2015年、過去に辞めた従業員らから密かに情報を集めたウォールストリートジャーナルが、その疑惑を記事に掲載。虚偽の実態が暴かれることとなった。(以上あらすじ)

 

少し前に読んだ ”The Underwriting” で、シリコンバレーのスタートアップ企業立ち上げの仕組みがわかった。もう一冊挑戦してみたくなったので、キーワードを検索して出会ったのが、2018年発行の本書。"Theranos" の元従業員を含む150人以上からのインタビューをもとに、シリコーンバレーのユニコーン企業の嘘と没落を描いたドキュメンタリーである。

 

さて、最初から"Theranos" にかかわる人物が次々と登場して複雑。名前を書き出しながら読み、社員が辞めるたびにバツ印で消していくことにした。 自主的に辞めるか、首になって即刻建物から追い出されるか、脅されて訴えられるか。従業員らが有能な専門家でも、経験豊富な年長者でも、かつての友人であってもエリザベスは容赦ない。相当数の人物がバツ印で消えていった! そんな彼女の強い性格は、子供のころのからであったようだ。

 

Chapter 1より~大人になったら大金持ちになる。そうなれば大統領が私と結婚するわ。

"What do you want to do when you grow up?"

Without skipping a beat, Elizabeth replied, "I want to be a billionaire."

"Wouldn't you rather be president?" the relative asked.

"No, the president will marry me because I'll have a billion dollars."

 

エリザベスが描いた夢のシステムは実現にはほど遠かった。検査機器は家庭でも手軽に置けるよう小型であることにこだわったため設計は困難で、指先からの少量の採血では正確な検査結果を出すことができなかった。開発は遅々として進まず、検査器の内部を見て失望した従業員のコメントが、そのお粗末ぶりを上手く言い当てている。

 

Chapter 1 より~有人火星探査のように理論的には可能ではあるが・・・

It might be theoretically possible, just like manned flights to Mars were theoretically possible.

 

Chapter 16 より~期待していた検査器は中学生がガレージで作る程度のものだった。

The device seemed to consist of nothing more than a pipette fastened to a robotic arm that moved back and forth on a gantry. Both had envisioned some sort of sophisticated microfluidic system. But this seemed like something a middle-schooler could build in his garage.

 

検査器は一向に完成しないまま、一方で、シュルツ元国務長官、マティス前国防長官、キッシンジャー元国務長官といったアメリカの重鎮らまで役員に取り込み、Theranos は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長する。黒のタートルネックに身を包み夢を語るエリザベスは、自らの目指すスティーブ・ジョブズだ。

 

Chapter 17 より~男社会のシリコンバレーで初の女性ビリオネア起業家が誕生した。

Her emergence tapped into the public's hunger to see a female entrepreneur break through in a technology world dominated by men. (略) In Elizabeth Holmes, the Valley had its first female billionaire tech founder.

 

エリザベスのカリスマ的魅力に騙されていく大物投資家や政治家の裏で、間違った数値結果を医者や患者へ報告するという倫理違反を目の当たりにし、職場を去ってゆく善良な研究者たちが後を絶たない。エリザベスを取り巻く人物が次から次へと登場して物語が2/3程進むと、やがて、突然 1人称 "I" が登場する章が現れた。"I"って誰だ?とメモを見直し、そしてページの最後をめくり、私は本の著者がウォールストリートジャーナルの記者本人だったことを思い出した。終盤になって著者がその虚偽を暴いていく展開は、まるでフィクションの犯罪小説を読んでいるようで、高慢なエリザベスと恫喝的な相棒のサニーに嫌悪感を覚えている読み手は、彼らが表舞台からが引きずり降ろされていく様に快感を覚えるはずだ。

 

Chapter 19 より~Theranos は、バスを造りながら走らせているようなものだ。

"The way Theranos is operating is like trying to build a bus while you're driving the bus.

 

Chapter 22 より~投資家、医者、患者、行政機関、あらゆるものに嘘をついて稼ぐ。

How to make money at Theranos:

1. Lie to venture capitalists

2. Lie to doctors, patients, FDA, CDC,government. While also committing highly unethical and immoral (and possibly illegal) acts.

 

読後はいつものようにYouTube を覗いてみる。TED talks では、絶頂期であったころのエリザベスが、青い目の美人には不釣り合いな低いトーンの声でスティーブ・ジョブズになり切っていた。そして、スキャンダルになっているニュースやナンバー2の恋人サニーを探して、いろいろクリックしてみた。まさに、事実は小説より奇なり。すでにエリザベスは詐欺罪などにより起訴されていて、2020年これから裁判が始まるようだ。英語は医学系の専門用語が含まれるが、時々意味を調べながら夢中になって読んだ。

2020.6

A Dog's Purpose

(野良犬トビーの愛すべき転生)

W. Bruce Cameron

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

野良犬として生まれた子犬が何度も生まれ変わって飼い主の少年に再会する


あらすじと感想

野良犬として生まれた僕の最初の名前は Toby。施設に保護されたけど、間もなく殺処分いきのケージに入れられた。でも、ゴールデンレトリバーの子犬に生まれ変わって、少年 Ethan の家に引き取られ Bailey と名付けられる。祖父母の Farm で夏を過ごし、池に落ちた Ethan を助け、森で迷った時に寄り添い、放火事件の犯人に噛みついて手柄も立てた。やがて Ethan はカレッジ に進学、年取った僕は家族に見守られ生涯を終える。

 

そして目覚めると、今度はジャーマンシェパードのメス Ellie に生まれ変わった!  Jakobと Maya から訓練を受けて、警察の search-and-rescue dog として活躍。ロサンゼルスで少女を救出すると、エルサルバドルにヘリで地震救助に向かい、引退後も嵐に巻き込まれた少年を救助する。

 

生涯を全うした Ellie は、次に黒のラブラドールになった!  僕は Farmで Ethan と再会できたけれど、歳を取った彼は一人寂しく暮らしていた。僕は Buddy と名付けられ、Ethan が昔好きだった Hannah と引き合わせることに成功する。そして、Ethan は死の間際、僕が Bailey だと気づいてくれたのだ。(以上あらすじ)

 

2010年発表のベストセラーで、2017年の映画の邦題は 「僕のワンダフル・ライフ」。今回は動物ものが読みたくなって検索して選んだ。野良犬として生まれた主人公の子犬 が別の犬に何度も生まれ変わって、最初の飼い主に再会するという愛情物語。物語は犬の目線で語られていて、何と生まれ変わった後も以前の記憶は消えずに覚えているという羨ましい設定だ。(犬が言葉を話すわけではない)

 

とにかく犬が愛らしい。教えられた言葉を理解し、自分の名前を呼ばれるとうれしくて尻尾を振ってしまう。その中でも一番は、good dog と褒めてもらうこと。難しい会話でも自分の知っている単語に気づいて、人の表情や感情を敏感に感じ取る。同居する猫たちを馬鹿な生き物だと思っているところも可笑しい。Ethan との日常は実にほのぼのしていて (Michigan という設定だった) その後もベタなストーリーが続くのだが、人を想い愛されることに喜びを感じる健気な主人公(?)に、何度も泣かされてしまった。

 

Chapter oneより~車の窓から顔を出している犬を見てびっくり

Occasionally I even saw a dog in a car! The first time this happened I stared in wonderment at his head hanging out the window, tongue lolling out. 

 

Chapter seventeenより~Ethanの家族は僕をgood dogって言ってくれた

Then Mom and Grandma and Grandpa and Rick all came in, and they hugged me and said they loved me and told me I was a good dog.

2020.5

ミシガン州 (Wikipediaより)

Educated

Tara Westover

★★☆  英語難易度

学校に通わず、モルモン教を狂信する家庭で育った著者が、大学教育を受けPhDをとるまでの回想録


あらすじと感想

Tara は、アイダホ州の山あいの田舎で、7人兄弟の末っ子として育つ。両親は厳格なモルモン教徒でその狂信ぶりは徹底していた。政府や学校は自分たちを洗脳する組織と考え、子供たちの出生届けも出さず、学校に通わせることもない。また、父親は廃品のスクラップ収集、母親は無免許の助産師をしつつ、世界の終日から生き延びるサバイバリストとして食料を貯蔵し政府と戦う準備に余念がない。更に、家族が事故で大けがを負っても病院に行くこともなかった。

 

そのような家庭内で、子供たちのホームスクールとは名ばかりで、読む本と言えばモルモン教の教え。家にいる限り兄弟たちは父親の仕事を手伝わなければならない。一方、3番目の兄 Tyler は BYU (Brigham Young University: モルモン教が運営するユタ州の私立大学) に進み、彼に後押しされた Tara もその荒んだ環境の家を出るため、大学受験をする決心をする。

 

独学で ACT test 28点を取り BYU に合格した Tara は、17歳にして初めて外の世界で教育を受ける。ヨーロッパを国だと思っていたり、”ホロコースト”を知らずに授業で白い目で見られたりと、大学生活は戸惑いの連続だったが、自分の無知を初めて自覚し知識欲に目覚めていく。3年生になった Tara は BYU から ケンブリッジ大学の短期留学の機会を得ると、そこで提出したエッセイが教授に認められ、 卒業後は Gates Cambridge Scholarship に合格し正式に大学院生となる。その後ハーバード大学で学ぶ機会を得、27歳でついにケンブリッジでPhDを取得する。しかし、信仰のみで生きる両親は Tara を認めることなく、家族との軋轢は最後まで残ったままだった。(以上あらすじ)

 

Tara Westover は1986年生まれ。2018年に発行した初の著書である本書が、The New York Times のベルトセラーになる。今回は、"学校に通ったことがない女性がケンブリッジで博士号を取った話" で、"オバマ元大統領もお薦めする"、という書評に惹かれて選んでみた。しかしこの回顧録に描かれていたのは、奇異な家庭環境から抜け出し大学で教育を受けるも、家族に認められることなく苦悩する女性の半生だった。

 

前半は大学に入るまでの Tara の日常。父親に支配された一家の凄惨な日々が事細かに綴られ、やがて2番目の兄 Shawn の虐待行為が加わると、私はすっかり辟易して読み進めるのが苦痛になってきた。後半大学に進学後も、休暇で帰省するたび Shawn の変わらぬ悪態が続き、ついに私は持病の胃痛を発症、胃薬を飲むという前代未聞の事態に陥った。

 

結局、PhD (The Family, Morality, and Social Science in Anglo-American Cooperative Thought, 1813-1890.) を取得はしものの、家族と価値観を共有させたいと願う娘の願いは決してかなうことがなく、読んでいて常に苦しかった。最後は、信仰の中で生きる両親とは心理的に決別することになる。驚くことに、7人の兄弟のうち Tara と2人の兄が PhD を取得し 、残り4人は高卒だ。教育を得た3人は自立し、残りの兄弟は親の下で親の考えと共に生きていくこととなった。

 

Chapter 1より~学校は神から子供たちを引き離す政府の策略だという父。

Dad said public school was a ploy by the Government to lead children away from God. "I may as well surrender my kids to the devil himself," he said, "as send them down the road to that school." 

 

Chapter 9より~2000年に世界の終日がくる。

(略) had been so certain that the Days of Abomination were upon us.

Dad called it Y2K. On January 1, he said, computer systems all over the world would fail. 

 

Chapter 15より~母親は、成長した娘の歳を覚えていなかった。

"Don't be silly," she said. "You are not sixteen. (略) You're at least twenty."

She cocked her head. "Aren't you?" 

 We were silent. My heart pounded in my chest. "I turned sixteen in September," I said.

 "Oh." 

  

Chapter 16より~BYU 合格でホームスクールの成果が証明されたという父。

Dad tried to be cheerful. "It proves one thing at least," he said. "Our home school is as good as any public education."

 

Chapter 18より~BYU の学友の派手な服装に戸惑うTara。例外は Vanessa だけだ。

I liked her because she seemed like the same kind of Mormon I was: she wore high-necked, loose-fitting clothing, and she'd told me that she never drank Coke or did homework on Sunday. 

 

Chapter 33より~ケンブリッジで居場所を見つけるも、両親との溝に悩む。

 My friends in Cambridge had become a kind of family, and I felt a sense of belonging with them that, for many years, had been absent on Buck's Peak. Sometimes I felt damned for those feelings. No natural sister should love a stranger more than a brother, I thought, and what sort of daughter prefers a teacher to her own father?

 

唯一、最終章の末尾まで来て、以前の自分を変えたものこそ "教育" である、と決意して締めくくった著者に感動した。"なぜ勉強しなければならないのか" は、私の中でも長年明確な答えが見つからずにいた。しかし少なくとも、親の狭い価値観から抜け出すため、というのがその理由の一つではないかと考えるに至った。英語は読みやすいが、私には難解な単語も頻出して多くをスルーしながら読んだ。初期教育なしで、どのようにしてこのような文章が書けるのかと思うような文学的な筆致だ。子供時代に地元で "Annie" の主役に選ばれたこともある筆者。きっと才能の持ち主なのだろうなぁと想像する。ただし、こんな本を暴露されて家族はどんな心境なのだろうか。

 

Chapter 40より~末尾 

 That night I called on her and she didn't answer. She left me. She stayed in the mirror. The decisions I made after that moment were not the ones she would have made. They were the choices of a changed person, a new self.

 You could call this selfhood many things. Transformation. Metamorphosis. Falsity. Betrayal.

 I can call it an education.

(Transformation, Metamorphosis: 変身, 変態 Falsity: 虚偽 Betrayal: 裏切り)

2020.5

アイダホ州(Wikipediaより)

The Underwriting

Michelle Miller

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

シリコンバレーとウォール街を舞台に、デートアプリ会社の新規上場の行方を描いたエンタメ小説。


あらすじと感想

Todd はウォールストリートの一流投資銀行 L.Cecil で働く32歳で、経歴、ルックス共に完璧だ。そんな彼が、シリコンバレーの新進企業でデートアプリを運営する "Hook" の IPO (Initial Public Offering:株の新規上場) を担当することになった。その 一連の "Underwriting" (証券会社が行う引き受け・売り出し業務)を行うことになったのは、Todd が指名したスタンフォードの後輩 Tara、2年目のアナリスト Neha 、それに金持ちのボンボン息子 Beau を加えた若いチームた。

 

一方、Hook を率いるのは、プログラマーで創業者である CEO(Chief Executive Officer) の Josh と CFO(Chief Financial Officer) を担当する Nickで、彼らもスタンフォード卒の若者。そして、彼らを支援しているのが VC(Venture Capital: 投資ファンド) の Phil Dalton だ。

 

両チームが動きだそうという時、スタンフォード大で一人の女子学生の死亡事件が起きる。 死亡したのは、Tara に憧れ L.Cecil に就職を決めていた Kelly で、死因はドラッグ (Molly) の過剰摂取だった。大学の RA で第一発見者の Robby に殺人の疑いがかかるが、kelly の兄 Charlie は赴任先の中東から帰国し、妹の遺品を調べ始める。

 

後半、Hook のプログラマー Juan がアプリのプログラムを覗くと、Kelly は殺された時刻に Hook にログイン状態で、Robby 以外の人物が部屋にいたことに気づく。アプリは何者かにハッキングされていたことが判明し、セキュリティーの甘さが露呈したことになった。その後紆余曲折あり IPO は成功したかに見えたが、その価格は一瞬にして暴落し、すべては水の泡と消えることとなった。事件の真相を知った Tara はすべてを Charlie に話し、L.Cecil を去ることを決めていた。

 

Todd: スタンフォード卒、 L.Cecil で働く32歳。

Hookを愛用し、自らの完璧さを武器に女遊びに勤しみつつ、昇進を目論んでいる。

(略)Hook, the app that had not only made his sex life considerably more efficient, but which was also the hottest company in Silicon Valley. An IPO on that app wouldn't just make a lot of people a lot of money, bringing it into L.Cecil would solidify Todd's promotion.

 

Tara: 2007年にスタンフォード卒、L.Cecil で働く28歳。

理想像は会社のバリキャリウーマン Catherine だ。

A gorgeous, successful woman with a high-powered career and a husband and two kids and a penthouse on the Upper East Side.

 

Neha: L.Cecil で働く2年目のアナリスト。身なりに頓着なくで闇雲に働く。

ブルックリン育ちで、金持ちの級友を見返すのが目標だ。

He got dropped off in a black car every morning, all the way from the Upper East Side, and acted like he was doing us a favor by going to Brooklyn Latin instead of some boarding school. (略) And Parker's parents worked on Wall Street. その目標が達成するのは、 When my kids are dropped off in black cars.

 

Beau: Georgetown 在学中は、CS miner専攻。富豪の息子で遊び人の26歳。L.Cecil で IPO のチームに加わる。

 

Josh: スタンフォード卒のプログラマーで Hook の創業者かつ CEO。癖のある人物。

初めてのミーティングで早速 Tara に突っ込みを入れる。

Why are you here? (略) You are an attractive woman, and you are here to use that attractiveness to blur objective thinking so that investors will be more likely to do what you want them to do. (略) because you're wearing tight jeans and heels and makeup.

 

Nick: 2004年にスタンフォード卒、マッキンゼー、HBS(ハーバードビジネススクール)という輝かしい経歴。途中、Josh に変わって CEO の座につく。

困難に直面した時は、自分の完璧な経歴を振り返り、自己暗示をかけ猛進する。

There was a tradition at HBS where all the MBAs put ten dollars into a pot to give to the first person in the class who got his pencil drawing on the cover of the Wall Street Journal, and Nick realized with confidence that it was going to be him.

 

He'd worked hard his whole life, since he was five years old, multitasking piano lessons and T-ball and accelerated reading classes after school. He'd put every moment of his time toward building a perfect resume, then risked it all for Hook.

 

Juan:  East Palo Alto (メキシコ系住民の多く治安が悪い)出身で、2009年バークレー卒。学生時代に Josh と共に Hook を立ち上げた一流プログラマー。

Juanに今までガールフレンドがいないのには理由がある。

He'd just never really found one that was good enough. He needed someone smart and funny, sure, but he needed someone who got where he came from, too, and appreciated that he needed to take care of his mother back in East Palo Alto and needed to not talk about his father's murdered body in Juarez(メキシコの都市). But the girls he met in San Francisco...their lives were just too uncomplicated for them to understand all of that.

 

IPOが成功した暁には育った街にコミュニティーセンターを立ち上げたいと思い立つ。

He'd use his to help kids in East Palo Alto, but all the rich guys he knew were programmers who only cared about video games, Lord of the Rings and the occasional rare turtle species.

 

Kelly: ブルックリンの普通の家庭から奨学金でスタンフォードに進み、L.Cecilに就職を決めた。一流大学の美人女子学生のドラッグ死はマスコミを騒がせる。

(略) no one would be so concerned if it were a poor black kid that had died, but I doubt they'd care as much if she'd been an ugly white girl, either.

 

Charlie: Kelly の兄。コロンビア大時代、9/11テロに遭遇し影響を受ける。Associated Press (AP通信) に入り、中東に派遣されている32歳。

ウォールストリートが嫌いで妹の就職先に反対する。

Helping rich corporations get richer? That matters to you? (略) I just want you to do something that's meaningful.

 

Amanda: フロリダ出身で、Penn(ペンシルベニア大学)卒、NYの一流 law farm に勤務する29歳。

Hook で出会った Todd に軽くあしらわれ続け、サンフランシスコに移り活路を見出す。

the pretty girls in California went to LA, leaving SF full of tall, athletic men who started companies and ran marathons (略) 

Amanda's enthusiasm for San Francisco was starting to wane. It felt like going back to college, but without the cool kids.

 

物語に登場するのはアメリカのトップ大学卒の若者たちなのだが、皆がみな自意識過剰系だ。Todd はウォールストリートの華やかな金融業界にいるモテ男の代表のようなキャラクター。そして、Josh とNick はシリコンバレーの IT産業に多く存在しそうなオタクでキモイタイプ。(Toddに言わせれば、それぞれ sociopathとsocially incompetent) Tara も Neha も目指すはキャリアウーマン。いずれにせよ、彼らにとって ビジネスは自分たちの更なる地位と金と名誉を得るためのもので、Hook の IPO 成功はそのまたとないチャンスなのだ。そして、彼ら若いチームを取り囲み巨額の富を操る投資家たち。お互いの損得勘定が絡み各々のエゴが丸出しで、なんだがいやなやつばっかりだ。唯一、Juan と Charlie だけ人間味のあるタイプでホッとさせられる。

 

 Toddにそっぽを向かれ続けるAmanda の存在もいい。ニューヨークを諦めサンフランシスコに移る彼女 が、東西両海岸の文化の違いを肌で感じ、どちらにもいい男がいなかったと悟るシチュエーションが面白い。29歳の彼女は、女性は30歳を超えると価値が下がると焦っていたのだが、結局男以外の道を開拓しようと思い立ったようだ。アメリカでも女性には依然として年齢の壁がある現実を見せられた。Catherine から Tara へのアドバイスもシビアで、Don't get married until you're thirty-five, but freeze your eggs at thirty so it isn't a distraction. と、堂々とセクハラ&パワハラの指導が入る。

そして、理想像だったその Catherine も家庭に問題を抱えていたことを知る。

 

出版は2015年で、本のカバーに著者 Michelle Miller のプロフィールと共に顔写真が掲載。笑顔が素敵なブロンド美人で、スタンフォードで BA と MBA を取得後、J.P.Morgan 勤務という経歴だ。自身が少なからず Tara のモデルで、小説は自分の目で見てきた世界なのだろうと想像する。

 

ところで、"hook" は、先日 "Asahi Weekly" のコラムで知ったばかりの英単語だ。 "遊ぼうよ" という時はふつう "hang out" だが、恋人としてアソブ時、"hook up" を使うという解説だった。アメリカではすでにデートアプリが若者の日常にすっかり浸透している事実に驚きつつ、その結果一企業に個人のプライバシーがすべて吸い取られている様がリアルに感じられた。創業者の Josh は自身が Hook を使うのかと聞かれ、Dealers should never use their own drug. と答えるところはさすがだ。妻子持ちの Phil は履歴からゲイであることがばれてしまった。(笑) 

 

スラングも多いが、英語は読みやすい。(ところどころ際どい場面も登場する。) 馴染みのなかった株式公開の流れがわかり (額が大きすぎて million や billion はやはり理解不能だった)、金融業界や最新のIT企業の裏側が覗けた。女子学生死亡事件の真実を追い、最後の最後までストーリーにはまり込んで読むと、何と全く想定外の人物が犯人で、著者に充分楽しませてもらった。

2020.4

The Joy Luck Club

(ジョイ・ラック・クラブ)

Amy Tan

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

中国から移住した4人の母親とアメリカ生まれの4人の娘の物語


あらすじと感想

1949年サンフランシスコにて、4人の中国人女性たちが麻雀卓を囲み食事をして語り合う会 "ジョイ・ラック・クラブ" を始めた。彼女たちは苦労して中国からアメリカに渡り、それぞれアメリカ生まれの娘がいる。今回は2カ月前に亡くなった Suyuan の代わりに娘の Jing-mei が後を継ぎ、彼女は母親が残してきた双子の姉が中国に生存していることをメンバーから知らされた。そして、同年代の4人の母親と、4人の娘達の人生が語られていく。

 

ーSuyuan Woo (母)

大戦中の1944年、日本軍の進撃で Kweilin (桂林)から Chungking (重慶)に逃れるさ中、双子の赤ん坊をやむなく置き去りにする。最初の夫は死亡し、Canning Woo と再婚、1949年サンフランシスコに移住した。

ーJing-mei "June" Woo (娘 36歳)

1951年サンフランシスコで生まれ、チャイナタウンで育つ。娘の才能を見つけ出そうとする母が疎ましく、子供時代はピアノを習わされていた。母親の死後、双子の姉が生存していることを知り、父と共に中国に向かう。

 

ーAn-mei Hsu (母)

1914年 Ningpo (寧波) 生まれ。弟と共に祖母と親戚に育てられる。家を追われていた自身の母が迎えに現れ Tianjin (天津) の洋館で暮らし始めるが、母は裕福な男の第4婦人であり、後に自殺してしまう。An-mei は後にサンフランシスコに渡り結婚する。

ーRose Hsu Jordan (娘)

子供時代に7人兄弟と共に家族で海に行き、自分が見ていなければならなかった末の弟 Bing が溺れてしまう。後に医者の Ted と結婚するが、現在離婚協議中。

 

ーLindo Jong (母)

Taiyuan (太原) 生まれ。親の決めた家に若くして嫁がされ、姑と年下の夫に辛く当たられる。自身の計略で離婚に成功し、Beijing (北京) からサンフランシスコに渡る。仕事場の工場で An-mei と知り合い、Tin Jong と結婚する。2男1女をもうける。

ーWavely Jong (娘)

1951年サンフランシスコ生まれ、チャイナタウンで育つ。チェスを学びナショナルチャンピオンになるが、14歳で限界を感じ諦めた。Jing-mei とはライバルで、娘自慢をする母に閉口する 。最初の夫 Marvin と離婚し、現在4歳の娘を連れ Rich と再婚予定。

 

ーYing-ying St. Clair (母)

1914年生まれ。Wushi (無錫)の裕福な家で育つ。4歳の Moon Festival (中秋節)で、湖で船から落ち溺れる。最初の夫の子を中絶し、後に Shanghai (上海)で出会ったアメリカ人と結婚しアメリカに渡る。Lenaを産んだ後、第3子は死産。

ーLena St. Clair (娘)

オークランドで生まれ育ち、10歳でサンフランシスコに移る。母の中国語がわからない父のために通訳する。Harold と結婚し二人でビジネスを独立させるが、夫婦間の関係に不満を感じるようになる。

 

これは、中国とアメリカの文化の違いを描いているようで、実は母娘の物語。発刊は1989年、著者のエイミ・タン自身もオークランド生まれの中国系アメリカ人で、両親が中国から移住しているようだ。母と娘8人の中国名が覚えにくく、エピソードが交互に描かれていて複雑だったので、上記、親子ごとにまとめてみた。

 

中国で苦労して育った母親たちは、自分たちの文化や風習、そして親としての思いを娘たちに伝えたい。一方、アメリカ生まれの娘たちは口うるさい母親たちをうっとうしく感じつつも、結局は否定もしきれないでいる。貧しい中国から自由の国アメリカに渡っても、女3代同じような苦悩が連鎖しているようでやるせない。この母娘の微妙な心の葛藤、確執が余りに絶妙に描かれていて、時に私自身と母親のことのようでもあり、読んでいてずっと苦しかった。これは移住に関係なく、きっとどの母娘にも少なからずある独特な思いだろう。Jing-mei が姉たちに再会する最終章になって初めてすべてのわだかまりが消え、苦しみから解放され感動できた。英語は非常に読みやすい。

 

Jing-mei Woo---The Joy Luck Club より~

ジョイ・ラック・クラブの意味を母から聞く

We feasted, we laughed, we played games, lost and won, we told the best stories. And each week, we could hope to be lucky. That hope was our only joy. And that's how we came to call our little parties Joy Luck."

(略)

In those day, before my mother told me her Kweilin story, I imagined Joy Luck was a shameful Chinese custom, like the secret gathering of the Ku Klux Klan....

 

Jing-mei Woo---Two Kinds より~

母の望むように答えられず、その失望した顔を見るのがいやだった

One night I had to look at a page from the Bible for three minutes and then report everything I could remember. "Now Jehoshaphat had riches and honor in abundance and... that's all I remember, Ma," I said.

  And after seeing my mother's disappointed face once again, something inside of me began to die. I hated the tests, the raised hopes and failed expectations.

  

Waverly Jong---Four Directions より~

中国の母親に黙れなんて言えないとアメリカ人の友人に言う 

  "Why don't you tell her to stop torturing you," said Marlene. "Tell her to stop ruining your life. Tell her to shut up."

(略)

"Well, I don't know if it's explicitly stated in the law, but you can't ever tell a Chinese mother to shut up.

 

An-mei Hsu---Magpies より~母娘は結局同じ道を行く

And even though I taught my daughter the opposite, still she came out the same way! Maybe it is because she was born to me and she was born a girl. And I was born to my mother and I was born a girl. All of us are like stairs, one step after another, going up and down, but all going the same way.

 

Ying-ying St. Clair---Waiting Between the Trees より~

娘の新居で一番小さい部屋に通された 

My daughter has put me in the tiniest of rooms in her new house. 

  "This is the guest bedroom," Lena said in her proud American way.

I smiled. But to Chinese ways of thinking, the guest bedroom is the best bedroom, where she and her husband sleep. I do not tell her this.

2019.12

中国(Zen Tech より)