英語の洋書と絵本 ANNIE'S BOOKSHELF

 MY BOOKSHELF 7

61-70

Bridget Jones's Diary

Crazy Rich Asians

The Sun is also a Star

Walk Two Moons

Wonder

Hillbilly Elegy

Where'd You Go, Bernadette

Charlotte's Web

The End of the Affair

The Hunger Games

Bridget Jones's Diary

(ブリジット・ジョーンズの日記)

Helen Fielding

★★☆  英語難易度


ブリジットはロンドン在住、30代、独身。あと3.1キロ体重を減らし、煙草をやめ、内面の安定をはかりさえすれば、物事はすべてうまくいく――はず!? 共感度抜群の不朽の名作。(Amazon より)

 2019.

Crazy Rich Asians

Kevin Kwan

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

シンガポール華僑のリッチな暮らしぶりが、ユーモアと皮肉たっぷりに描かれる。


あらすじと感想

ケヴィン・クワンによる2013年発表の小説。

本を選ぶときには、amazonのサイトの書評を大いに参考にしているのだが、今回はこの一際目立った表紙が目に飛び込んできた。興味をもっていると、翌日の朝日新聞の朝刊(2018.11.19)に映画版 (オールアジア人キャスト!) の記事が大きく出ていて、早速クリックしてしまった。

 

ストーリーは、アジア人蔑視にあったイギリスのホテルで、その高級ホテルをその場て買い取ってしまうというクレイジー・リッチなプロローグからスタートする。ところ変わって、ニューヨークに住む恋人同士のニックとレイチェル。幼馴染の結婚式のため、ニックはレイチェルを連れてシンガポールに里帰りする。御曹司であるニックが初めてガールフレンドと帰省すると聞き、シンガポールではニックがどんな女性を連れてくるのか、一同が大騒ぎで待ち構えていた。レイチェルは一族の豪華な暮らしぶりに感嘆し彼らに溶け込もうとするが、ニックの母親エレノアは何とか二人を別れさせたいと思っているのだ。PhD取得の経済学者で名門ニューヨーク大学の教授という経歴でも、家の格なしでは結婚相手として認められないというのが母親の考えだ。

 

富裕層の人々の生活はとにかく派手だ。飛行機はもちろんファーストクラス、それにプライベートジェット、豪華なパーティーとそのために必要なブランドの服や宝石。彼らは、(いとこのアストリッドの夫マイケル曰く) ”世界の半分が飢えているのに、結婚式に莫大な金をかける人たち” だ。その上、自分たちの財産や血筋を守るために必死で、それゆえ極めて排他的になる。そんなクレイジーリッチな人々の世界が、皮肉交じりにコミカルに描かれる。やがて、レイチェルも一族の常識を超えた暮らしぶりや富と血筋への執着に嫌気がさしてくるようになり・・・二人は結婚するのか、別れるのか、500ページ超の最終章でレイチェルと彼女の母親の生い立ちが明らかになるまで、最後までやきもきしながら読んだ。

 

Part Three-2より~世界の半分が飢えているのに結婚式に浪費するのか。(マイケル)

 "If it makes you feel better to know---yes, I'm off to see my mistress. I'm leaving on Friday after work, just so I can get away from this carnival. I can't watch these people spend a gazillion dollars on a wedding when half the world is starving."

 

Part Three-14より~

君の両親には金持ち以外と付き合うというDNAがない。(マイケル)

 "Face it, Astrid, your parents will never respect my family the same way they respect your brothers' wives' families. We're not mighty Tans or Kahs or Kees---We're Teos. You can't really blame your parents. They were born that way---it's just not in their DNA to associate with anyone who isn't from their class, anyone who isn't born rich or royal."

 

さて今回は、文字が小さくてとにかく疲れた。(タブレットも疲れるので私は紙派。)まず、ページ最初の家系図が豆粒のように小さくて老眼鏡でも見えない。そこで、パソコン上のページを拡大して印刷し、A4を3枚つなげて完成した巨大な系図にチェックを入れながら読むことにした。それでも、3系列にまたがった4代に渡る一族の登場人物の名前を把握するのが大変。後半に入って物語の概要がつかめると、おもしろくなってようやく一気に読破できた。(老眼が更に進んでしまった!)

2019.1

The Sun is also a Star

Nicola Yoon

★★☆  英語難易度

移民という現代アメリカの社会問題を背景に若者の恋愛を描いたヤングアダルト小説。


あらすじと感想

舞台はニューヨーク。2016年出版で、今どきの都会の若者の感覚を感じられるかなと興味を持ち読んでみた。主人公がアジア人と黒人の男女というの新鮮だ。

 

一人目の主人公 Daniel は韓国系アメリカ人。豊かな生活を求めてアメリカに移住してきた両親は、黒人女性用のヘアケア商品の店を営んでいる。兄の Charlie は親の希望通り(親に言わせれれば1番の)ハーバード大に入ったものの、なぜか停学中。だから親の期待は Daniel に向き、(親の言う2番の)エール大に入って医者になるよう期待されている。両親は、アメリカで生まれ育った息子たちが韓国文化を学び、韓国系の女性と結婚するのを望んでいるが、兄の Charlie は韓国のことが嫌いだ。一方、弟のDanielは本当は詩人になりたいけれど、親の意に添うように今日はエール大の面接に向かうのだ。

 

もう一人の主人公 Natasha は、ジャマイカ出身の黒人の女の子。彼女の父親は役者を夢見てアメリカに渡り、その後家族を呼び寄せ、弟の Peterはアメリカで生まれている。1ベッドルームのアパートは狭く、生活は楽ではない。アメリカ生活はもう10年近くになり科学が好きでデータサイエンティストを夢見ている Natasha は、他の友達のように大学進学するはずだった。しかし、父親の過失により家族が不法移民であることがばれてしまい、国外退去が決まってしまった。帰国のフライトは今夜の便だ。

 

・・・と、最初は現代の社会問題を背景にした設定に引き込まれたのだけれど、やがて、Daniel の提案による方法で二人の距離は急速に縮まり・・・こんなに何度も偶然が重なるの? と少々疑いたくなるような展開になった。(Natasha が相談に訪れる弁護士は、Daniel の面接担当のエール大OBだったり。)それに、アメリカでは今の若い人ってこんなに理屈っぽく哲学的な会話をするのかな?などなど。

 

このままハッピーエンドで Natasha はアメリカに残れるのか? という予想はもちろんはずれて、結局彼女はジャマイカに帰ってしまい、Daniel はエール大に行かない。二人の恋は出合った日1日限りで、時と共にその記憶も薄れて・・・という切ないエンディングなのだが、この後に10年ぶりに飛行機内で再会するという短いエピローグが追加されていた。(個人的には切ないままの方が余韻に浸れてよかったと思うのだけれど。)

 

恋の行方は別として、人種や移民問題に関しては学ぶことが沢山あった。移民対アメリカ人の問題だけでなく、移民同士の間でも人種の問題が存在するから複雑だ。ブルックリンの Natasha のアパートの近所で、アジア人と黒人というカップルに対する街の人の好奇の視線に戸惑う二人のエピソードが象徴的だった。 今朝の新聞の1面では、中米からメキシコ国境まで到達した”移民キャラバン”と、トランプ大統領のいつもの皮肉たっぷりののコメントの記事があった。日本にいると他人事になってしまいがちな問題が、少し身近に感じられた。

 

natashaより~アジア人と黒人のカップルに好奇の目を寄せる街の人。

 "People are staring at us," I say.

 "It's because you're so beautiful," he says back, without missing a beat.

 "So you noticed?" I press.

 "Off course I noticed."

(略)

 "It's either because I'm not black or because you're not Korean."

 

読み終わって、他の人の書評も気になってネットを見てみた。主人公二人のことをずっと空想しながら読んでいたのだが、来年2019年に映画ができるとのこと。キャスティングされたアジア人と黒人の俳優さんたちは、みなさんイケメンと美女でした! 

 2018.11

Walk Two Moons

(めぐりめぐる月)

Sharon Creech

★★☆  英語難易度

家を出た母を訪ねて祖父母と北米横断の旅に出る少女の物語。


あらすじと感想

今回も何を読もうかあれこれネットを検索していると、気軽に読めそうな児童書で書評もとても良い本書に出合った。シャロン・クリーチの1995年の作。しかも、ニューベリー賞受賞作でかなり期待して読み始める。十三歳の少女サラは、家を出た母親をたずね、祖父母と車で北米横断三千キロの旅に出る。祖父母の愛につつまれながら旅をする間、サラは親友フィービィとその家族にまつわる話を語っていくというお話。

 

実は、風変わりな登場人物たちに、最初から少々てこずった。特に親友フィービーの言動が13歳にしてはちょっと幼いんじゃないかなどと、頭が硬くなった大人の私は終始イライラさせられながら読むことになってしまった。しかし、最後に物語の謎が解けて、ああそうだったのかと、今までばらばらだったパズルのピースがはまる。サラマンカを置いて家を出てしまった大好きだった母はどうして帰ってこないのか、フィービーの母は戻ってきたのに・・・と、旅の最後、サラマンカが母親の墓に行きついたとき、読者は初めてその理由を知って涙することになる。そして、成長した少女を通して温かい感動が得られる。

 

一緒に車で旅をする祖父母も、愛情深く魅力的。オハイオからインディアナ、イリノイ、ウィスコンシン、ミネソタ、サウスダコタ、ワイオミング、モンタナ、そしてアイダホまで。広大なアメリカを横断する中で名所に立ち寄りながら、アメリカの自然も楽しめた。ただし、文学的というより、どこか道徳的な作品だった。

2018.10

Wonder (ワンダー)

R.J.Palacio

★☆☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

顔に障害を持つ少年オーガストが学校生活を通して成長していく心温まる物語。


あらすじと感想

舞台はアメリカ、ニューヨーク。オーガスト、通称オギ―は優しい両親のネートとイザベル、姉ヴィアの4人家族で、スターウォーズにはまっている10歳の男の子。遺伝性疾患で生まれつき顔に障害のある彼は家庭学習を続けていたが、家族に励まされ初めてミドルスクール(5年生)に入学することになる。

 

How I Came to Lifeより~

ママは生まれてきた僕を見てなんてかわいい目なのって思ったんだ。

 Mom says by then they had told her all about me. She had been preparing herself for the seeing of me. But she says that when she looked down into my tiny mushed-up face for the first time, all she could see was how pretty my eyes were.

 

学校では早速好奇の目にさらされ戸惑うオギ―。一人ぽつんと座っていた食堂で一緒に食べてくれたのはサマーだ。そして、すれ違いを乗り越えて友達になれたジャック。ジュリアンからいじめを受けながらも、オギ―を受け入れてくれる友達ができる。一方、人気グループのジュリアンや他の子供たちの微妙な力関係もあり、級友たちも心揺れていた。

 

The Performance Spaceより~

その顔、火事にでもあったのか?ジュリアンからからかわれるオギー。

 "Can I ask you a question?" he said.

 I shrugged again. Didn't he just ask me a question?"

 "What's the deal with your face? I mean, were you in a fire or something?"

 "Julian, that's so rude," said Charlotte.

 

姉のヴィアは、入学した高校で以前からの友達ミランダに避けられていることに気づく。程なく、ボーイフレンドのジャスティンと仲良くなり学校の劇のパフォーマンスに共に参加を決めるが、新しい学校でオギ―の存在を知られたくないヴィアは、劇のことを隠して母親と言い合いになってしまう。そんな中、愛犬デイジーが病死する。オギ―に対する気持ちを恥じたヴィアは、家族が鑑賞する中ミランダの代役で主役を演じきり、スタンディングオベーションを受けた。

 

Goodbyeより~愛犬デイジーに別れを告げるヴィアとオギー。

 "Say goodbye to Daisy, kids," Mom said, tears streaming down her face.

 "I love you, Daisy," Via said, kissing Daisy on the nose. "I love you so much."

 "Bye, little girlie...," I whispered into Daisy's ear. "I love you..."

 

5年生の2泊3日の外泊行事。オギ―は他校の上級生に目を付けられ絡まれるが、別のグループだと思っていた級友たちに助けられる。オギ―の存在はいつしか周囲に影響を与え、互いに成長していた。学年末、大勢の生徒と保護者が見守る中、優秀な生徒が順次表彰され、最後にオギ―の名前が呼ばれた。

 

Awardsより~優等生として表彰されるオギー。

 "'He is the greatest,'" he finally continued, "'whose strength carries up the most hearts by the attraction of his own.' Without further ado, this year I am very proud to award the Henry Ward Beecher medal to the student whose quiet strength has carried up the most hearts.

 "So will August Pullman please come up here to receive this award?"

 

2012年、R.J.パラシオ著。主人公オギ―の難病は、トリーチャー・コリンズ症候群という。2017年、母親役のジュリア・ロバーツと子役のジェイコブ・トレンブレイの主演で映画化され、日本でも現在(2018年)公開中。購読している Asahi Weekly でもちょうど紹介されていて、以前読んだ ”Room" の映画で主演した少年が、今回は特殊メイクで挑んでいた。

 

原作の英語は子供の口調で語られていて、難しくないからどんどん読める。障害を抱えていじめを受けるオギ―や戸惑う級友たちの心の内が素直に綴られていて、気づかぬうちに感情移入してしまう。また、オギ―中心に回る家族の中での、姉ヴィアの複雑な心境もよく理解できる。そしてどんどん物語に引き込まれていき、愛犬デイジーが死んでしまうシーンでは何と号泣してしまった。何よりオギ―を支える両親がとにかく素晴らしくて、読んでいて本当に温かい気持ちになった。素直に愛情表現できる海外の文化っていいなあ。1年間の行事などを通して、現代のアメリカの学校生活の様子を垣間見ることもできた。さすが、ベストセラー。久々に感動するストーリーに出合えた。

2018.6

Hillbilly Elegy

(ヒルビリー・エレジー)

J.D.Vance

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

アメリカでの貧しい白人労働者階級の現実を描いた回想録。


あらすじと感想

著者はラストベルト(錆ついた工業地帯)と呼ばれるオハイオ州の出身で、貧しい白人労働者の家に生まれ育った。しかし、自分の力で海兵隊を経てオハイオ州立大学に進学し、その後奨学金を得てイェール大学ロースクールへと進む。初めてエリートの一員となり、卒業後は授業で知り合った女性と結婚してアメリカンドリームを体現した。(以上あらすじ)

  

Introductionより~白人労働者階級はヒルビリー(田舎者)と呼ばれている

I may be white, but I do not identify with the WASPs of the Northeast. Instead, I identify with the millions of working-class white Americans of Scots-Irish descent who have no college degree. To these folks, poverty is the family tradition---their ancestors were day laborers in the Southern slave economy, sharecroppers after that, coal miners after that, and machinists and millworkers during more recent times. Americans call them hillbilliesrednecks, or white trash. I call them neighbors, friends, and family.

 

2016年著。ヒルビリーは田舎者、エレジーは哀歌の意味である。

2016年にトランプ大統領が誕生して、彼を支持する白人労働者階級の現実、分断されたアメリカの現状がクローズアップされた。オハイオ州で生まれ育った著者の一家は、もともとケンタッキー州のジャクソンが故郷。ネットを覗くとのどかな山あいの町で、一見日本の地方の田舎のようでもある。その町を含むアパラチアという地域(下記地図参照)は、以前読んだ ”The Hunger Games” でも主人公が住む貧困地域として設定されていたことを思い出した。子供は勉強しないし親も子供に勉強させない、若くして子供を産み、暴力、ドラッグ、そして銃・・・。この代々伝わる貧困は、自分たちの怠惰さを棚に上げ、すべてを政府のせいにしている彼ら自身に問題があるというのが筆者の考えだ。彼はイェール大に進みエリート層の世界を知ることによって、自分の育った最下層の生活を客観的に捉えることができているのだろう。

 

Chapter 9より~

我々は子供の時は勉強せず、親になっても子供に勉強させない。

 We don't study as children, and we don't make our kids study when we're parents. Our kids perform poorly in school. We might get angry with them, but we never give them the tools--like peace and quiet at home--to succeed.

(略)

我々が働かないのは、オバマが炭鉱を閉鎖し仕事は中国人に取られたからだ。

We talk about the value of hard work but tell ourselves that the reason we're not working is some perceived unfairness: Obama shut down the coal mines, or all the jobs went to the Chinese.  

2018.6

アパラチア(Wikipediaより)

Where'd You Go, Bernadette

Maria Semple

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

娘のママ友とは気が合わないバーナデット。失踪した彼女はいったいどこへ?


あらすじと感想

アメリカ・シアトルに住むビー・ブランチは、地元の私立ゲイラー・ストリート・スクールに通う優秀な8年生の女の子。母親も通った東海岸の名門ボーディングスクール、チョート・ローズマリーに合格した。母親のバーナデット・フォックスは、かつて権威あるマッカーサー賞を受賞したほどの有能な建築家だが、現在は近所づきあいが嫌いな専業主婦。そして、父親のエルジン・ブランチはマイクロソフトに勤務し、TEDで4位になったほどのエリートエンジニアだ。ビーの合格祝いにクリスマス休暇の南極旅行が決まるが、バーナデットはあまり乗り気でない。

 

彼女は娘ビーの学校のボランティアにも参加せず、日々の用事もネットを通してインドに住むマンジュラにお任せで引きこもり状態のまま。息子がビーと同じ学校に通うお隣のオードリー・グリフィンとは全く馬が合わず、子供の送迎時に足をひかれたと難癖をつけられる。さらに、要求されていたブラックベリーのつるの撤去後の大雨で、オードリーの家でのパーティの真っ最中、土砂がガラスを割って家に流れ込んでしまった。オードリー一家はホテル住まいを余儀なくされ、二人の関係は最悪に。

 

父親のエルジンは、オードリーのママ友で彼の下で働くスーリンに、妻のバーナデットの様子がおかしいと相談をもちかける。彼は妻の地域でのトラブルを初めて知り、彼女を精神科の施設入れようか思案。また、インドのマンジュラを介してロシアに個人情報が漏れていたことをFBIから告げられる。仲が接近したエルジンとスーリンがホテルから帰宅すると、警察、FBI、バーナデットと鉢合わせて、バーナデットはバスルームに姿を消したままいなくなった。

 

母親が失踪し、娘のビーは予定を早めてボーディングスクールへ入る。一方バーナデットは隣家のオードリーの助けを借りて家を脱出後、一人で南極に向かっていた。エルジンと妊娠が発覚したスーリンは、南極クルーズ船を迎えにアルゼンチン南端ウシュアイアへ向かうが、バーナデットの情報は得られず自殺の疑念も。

 

ビーは、新しい学校に馴染めず退学になりシアトルに戻る。母親から送られてきた過去の書簡で今までのいきさつを知り、母親の生存を確信したビーは、父親と改めて南極ツアーに参加し手がかりを探る。果たして、途中クルーズ船が停泊中に南極のアメリカ基地パーマーステーションに忍び込むと、バーナデットがそこにいた!(以上あらすじ)

 

2012年に発刊したマリア・センプルの コメディタッチの小説。 

楽しく読めた! 登場人物のEメールのやり取りを中心に物語が進んでゆくという手法がIT時代っぽくて新鮮で、くすっと笑いながらあるある、と納得してしまうエピソードが満載。現地の固有名詞等含め英単語が少々理解不足だけれど、今どきのアメリカ生活の一齣が垣間見えおもしろかった。

 

特に笑えたのは、最初の方のママ友(いや、友達ではないが)とのごたごたエピソード。私自身も子育て中は忙しすぎて社会から隔離された生活を送っていたし、PTAというのは一歩間違えると怖いところだという洗礼も受けて、アメリカも日本も同じなのね、と変に納得しながら読んでいた。それに、一人家で知らない単語と戯れながら洋書なんぞを読むのが楽しいというところも、引きこもりのバーナデットと似ているかも。

 

でも、バーナデットの人嫌いはちょっと桁外れ。最初に登場する ”マンジュラ” は、バーナデットの会社の部下か家のお手伝いさんかと思って読んでいると、なんとその人物はインドに住んでいて、インターネットを介して自分たちの旅行の準備まで頼んでいる始末。さすがアメリカは進んでいるなと感心していたら、またまたどんでん返し。FBIまで登場し、ロシアに個人情報が流出していたなんて・・・

 

西海岸のシアトルはマイクロソフトの本拠地で、発展したITの都市をイメージしていたが、読んでいると、やはり東海岸特有のソフィスティケートな社会とは相いれないものがあるんだろうなと感じた。部下の女性スーリンが、家庭の事情でUSC(LAの南カリフォルニア大学:前に読んだ ”キューティー・ブロンド" のおしゃれギャルの大学だ!)を諦め、やむなくUW(シアトルのワシントン大学)に進学したこと、ニューヨークも見たことがないと漏らすくだりも現実感たっぷり。

 

だから、夫婦でプレップスクールからアイビーリーグの大学に進んだというエリート一家が、シアトルしか知らない地元の家庭と価値観が合わないのは当然。(根はみんなとってもいい人達なんだけどね。)母親と同じチョート・ローズマリー(調べたらトランプ大統領の娘イヴァンカさんの出身校だった)に喜んで入学したビーも、東海岸のスノビッシュな友達に馴染めず、両親の才能を引継ぎつつも、彼女はすでに立派なシアトルっ子として成長していたんだなと思う。

 

文中より~ビーはマッカーサー賞を取った母親のことを同室のサラに否定される。

I told Sarah my mother was a famous architect who had won a MacArthur genius award, and Sarah said, "She did not." And I said, "Sure, she did. Look it up." But Sarah Wyatt didn't look it up, That's how little respect she had for me.

 

後半、バーナデットが失踪してからは、ちょっぴりサスペンスチックな雰囲気。南極旅行については全く知識がないので、少しネットを覗いてみた。世界中を行き尽した人たちがツアーに集まるんだなあと想像した。作品中では日本人の団体も乗船していて、ただの一言の英語もしゃべれないで通訳が同伴・・などど揶揄されていた。(船内で折り紙の紹介などが行われているらしい)

 

最後は何でバーナデットがパーマー基地に?と思ったが、(調べると基地滞在者は研究者以外に特別枠もあるらしい)なるほど、基地のプロジェクトには建築家としての彼女の才能が発揮できるチャンスがありそうだ。物語の最初からキーポイントだった南極旅行と

バーナデットの建築家としてのキャリアが、最後になってやっと結びついた!映画化されたら、ブラックベリーを撤去して土砂が隣家になだれ込むシーンを観てみたい!

2017.7

Charlotte's Web

(シャーロットのおくりもの)

E.B.White

★☆☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

ブタのウィルバーとクモのシャーロットの友情を描いた児童文学


あらすじと感想

ファーンは農場に住む8歳の女の子。ある日、一番小さく処分されそうになった仔ブタを、近くに住むおじさんの納屋で育てることになった。ファーンは仔ブタをウィルバーと名付け、学校帰り毎日納屋に通うようになる。他の動物たちと楽しく過ごしていたウィルバーは、ある日、自分はいずれ殺されて肉にされる運命にあることを知りショックを受ける。それを上から見ていたクモのシャーロットは、落ち込むウィルバーを何とか助けたいと、奇跡の計画を策略する。

 

ある朝、納屋の戸口には、クモの巣の中央に糸で書かれた ”SOME PIG" の文字。これを見た家族たちは、ウィルバーが "特別な豚" に違いないと驚く。シャーロットは、"TERRIFIC" 、 "RADIANT" と次々に文字を書かいたクモの巣を作り、ウィルバーは町中で有名なブタになった。秋になり、ファーンの家族はカウンティ・フェアのお祭りにウィルバーを連れていくことになった。一緒についていったシャーロットが最後の力を振り絞り "HUMBLE" の文字を書き、ウィルバーは賞をとった。卵を産んで力尽きたシャーロット。ウィルバーはその卵の袋を納屋に持ち帰る。そして、ウィルバーは納屋でずっと飼われることになり、季節がめぐり春が来ると、シャーロットの子供たちがたくさん生まれ巣立っていったのだった。(以上あらすじ)

 

アメリカの作家E.B.ホワイトによる1952年に出版された児童文学作品。

いくつか堅い話を続けて読んだので、今度はほのぼのとするストーリーが読みたくなり、表紙の愛くるしい少女と動物たちに一目ぼれ。200ページ弱だが所々イラストが挿入されていて、農場関係の単語をいくつか調べた他は文字も大きめであっという間に読める。主人公は少女のファーンではなく、ブタのウィルバーとクモのシャーロットの友情を中心に描いたストーリー。大人が読んでも、疲弊した人間社会からしばし離れ素直な心を取り戻せそうなよいお話だった。

 

ネットで2006年の実写版の映画を覗くと、動物たちが更に愛くるしくて好きになった。(ただ、クモのシャーロットのアップは結構気持ち悪い!)ウィルバーのかわいい声も(動物たちは言葉をしゃべる!)最高で、童心に返り優しい気持ちになれた。ひと昔前のアメリカの農場の風景も大変美しかった。世界中の子供たちにお勧めしたいそんな一冊。

2017.6

The End of the Affair 

(情事の終り)

Graham Greene

★★☆  英語難易度

恋愛と嫉妬や疑惑、信仰の問題を扱った文学作品。


あらすじ と感想

第二次大戦中と直後のイギリス、ロンドン。作家のモーリス・ベンドリクスは知り合いの高級官僚ヘンリー・マイルズから、ヘンリーの妻サラが浮気をしているのではないかと相談を持ちかけられる。モーリスとサラはかつて不倫関係にあったが、モーリスは一方的に突然関係を打ち切ったサラの真意がわからずにいた。今の浮気相手の真相を探るべく、モーリスは探偵 Parkis 親子を雇ってサラの調査を始め、彼女の愛が綴られた紙片と日記を入手し、予想外の真実を知ることとなる。

 

サラは無神論者であったが、密会中に爆撃で気を失ったモーリスを死んだと思いこみ、"生き返らせてくれれば彼との関係は諦める" と初めて神に祈る。すると直後に生還した彼を見て、サラは神との誓いのためにモーリスの元を去ったのであった。神への究極の愛に苦しんだサラは、最後、病で命を落とす。(以上あらすじ)

 

イギリスの作家グレアム・グリーン(1904-1991) の1951年の小説。以前に読んだ有名な "第三の男" がとてもよかったので、次は恋愛小説に挑戦することにした。タイトルの示す通りどろどろした不倫小説かと思って読み始めたのだが、ちょっと覗いてみたR15指定の映画バージョン的な要素はほとんど感じられず、人間の嫉妬や疑惑、信仰の問題を扱った高級な文学作品だった。

 

物語はサスペンス的進行で、不可解な謎が主人公の日記により明かされるという読ませる構成になっている。そのため、時間軸が複雑で(過去を回想するなど)きちんと読んでいく必要があり難しく感じた。途中から、神への信仰のテーマが絡んでくると理解が更に難解になった。日本人の私に取って、神の存在についての冗長な理屈について英単語を追っていくのは骨が折れ、どこまで理解できたかわからない。が、"情事の終り" の後出現したあなたが神であったという、タイトルからは想像もしなかった全くの予想外の物語に、この海外文学の奥深さを感じた。

2017.6

The Hunger Games 

(ハンガーゲーム)

Suzanne Collins

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

ハンガーゲームが繰り広げられる未来国家を描いたヤングアダルト小説。


あらすじと感想

2008年、アメリカの作家スーザン・コリンズによるヤングアダルト小説。本書は3部作の内の第1作で、2009年に第2作 (Catching Fire)、2010年に最終作(Mockingjay) がそれぞれ発刊され、映画やソーシャルゲームも公開された人気作である。映画を3作とも観たという娘のお薦めもあり、私にとっては新境地の開拓の目的もあって原書に挑戦することにした。

 

文明が崩壊した後の北アメリカに位置する国家パネム。この国はキャピトルと呼ばれる都市の富裕層によって支配されており、キャピトルを囲む12の恵まれない地区はキャピトルの統制下にある。反乱を抑えるための見せしめとして、毎年各地区から男女1名づつ、くじで選ばれた不運な12歳から18歳までの24人の若者にハンガーゲームを課すというシチュエーションである。

 

未来都市に住む富裕層は貧乏人のことなどお構いなく人生を楽しむ。貧乏人は文明と切り離され、そこから抜け出すことができない。立場が逆転しないように統制されていて、現代社会の抱えている問題そのものだ。いくら長い歴史を経ても人間同士の争いがなくならない以上、今後はこれも社会の統制方法の一つかもしれないとまじめに考えてしまった。今までならば、如何にもヤングアダルト受けしそうな闘争劇と思って読んだと思うが、昨今の世界情勢、とりわけ昨年2016年にトランプ大統領が誕生して後、このような未来像もいよいよ現実味を増してきたように感じてきた。日本も近いうち、アメリカの後を追うのだろうか。監視社会を描いた、ジョージ・オーウェルの  "1984年" に近い世界観だと感じた。

 

物語の中盤になって、いよいよハンガーゲームが始まってからがこの作品の読みどころだろう。私個人的には殺し合いのシーンは苦手なのだが、ホラー的な描写はあまりなく淡々と読めて助かった。怖かったのは、殺戮劇を前に観客がお祭り騒ぎで熱狂する様だ。たぶん、映画版はもう少しエンターテイメント的に楽しめるのだろうか。

 

英語は思ったよりも単語が難解で、私の英語力では少々苦戦。最後は、第12地区出身の主人公カットニスと級友ピータが恋人同士を装う作戦も功を奏して、特例の2人の勝者となる。2作目3作目の展開が気になるところだが、とりあえず1作目でいったん話が完結しているので、後は映画版を観る機会を待とうと思う。

2017.6