英語の洋書と絵本 ANNIE'S BOOKSHELF

 MY BOOKSHELF 9

81-90

The Inimitable Jeeves

Slumdog Millionaire

Alice's Adventures in Wonderland

The Woman in the Dunes

Thousand Cranes

The Voyages of Doctor Dolittle

The Story of Doctor Dolittle

Born a Crime : Stories From a South African Childhood

I Can Explain Everything: Confessions of a Pet Capybara

Celeste and the Giant Hamster

The Inimitable Jeeves

(比類なきジーヴス)

P.G.Wodehouse

★★★  英語難易度

(^^)/  お薦め

若旦那バーティと執事ジーヴスの繰り広げるユーモア小説


あらすじと感想

2018年、上皇后美智子様が退位後に是非読みたいと名前が挙がったジーヴス。興味を持って検索をかけると、舞台となっているイギリスでは有名なユーモア小説らしい。何冊もシリーズになっている中から、1923年発行の本書を選んでみた。

 

暇を持て余し、人はいいがダメ男の若旦那バーティ・ウースターと、そんな主人公が生活のすべてを頼っている召使のジーヴス。ジーヴスは主人を取り巻くどんな難題?にも奇策妙案で応じる凄腕執事だ。最初のエピソードでその難題?を持ってくるのは、バーティの幼馴染ビンゴ・リトル。彼は生活費の援助を受けているおじに、何とかウエイトレスのメイベルとの仲を認めてもらいたくて、ジーヴスの知恵を借りに来る。次のエピソードでは、アガサおばさんに結婚相手としてヘミングウェイを紹介させられたバーティ。彼は女性とその弟シドニーに金を貸したものの、実は騙されていて・・・。などなど、1話完結の短編が時系列順に並んでいて、毎回珍騒動が繰り広げられる。

 

度々登場するのが、オックスフォード大までずっと一緒だったビンゴだ。彼はバーティ以上の陽気なお調子者で、おまけに女好き。その恋は毎回成就しないのだが、全く懲りずに次の章では新しい女性に惚れる。バーティの双子のいとこクロードとユースタスもまた、手に負えないやんちゃ。彼らはついにオックスフォード大を放校処分になり、南アフリカ行きもすっぽかす。古き良き時代の英国上流階級の面々。未だ若いバーティやビンゴのみならず、彼らを監督しているつもりの親族たちもどこか間が抜けていて、お気楽貴族のユートピアといった世界観が広がる。仕えるジーヴスが一人有能で紳士然としていて、その対比も面白い。

 

Chapter 15 Metropolitan touch より~

ビンゴは面白いやつだが、手あたり次第出会った女に惚れ込むのはいかがなものか

Nobody is more alive than I am to the fact that young Bingo Little is in many respects a sound old egg. In one way and another he has made life pretty interesting for me at intervals ever since we were at school. (略)

On the other hand, I'm bound to say that there are things about him that could be improved. His habit of falling in love with every second girl he sees is one of them;

(略)

"The girls you fall in love with, (略) no two of them are alike. First it was Mabel the waitress, then Honoria Glossop, then that fearful blister Charlotte Corday Rowbotham--"

 

Chapter 17 Bingo and the Little Woman・Chapter 18 All's Wellより~

最終章で、お騒がせビンゴがついに結婚したことをバーティに告げる

"I know what it was I wanted to tell you. I'm married." 

(略)

"The same girl you were in love with the day before yesterday?"

 

英語は難解な単語や聞きなれない言い回し、とんちの効いた回りくどい表現も多く苦戦したが、時に調べたり読み返したりしながらシニカルなユーモアを楽しめた。何より、美智子様はきっとユーモアのある方なのだなというのが一番の感想だ。

2019.11

Slumdog Millionaire

(ぼくと1ルピーの神様)

Vikas Swarup

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

クイズ番組で10億ルピーを得たインド人孤児が辿ってきた半生


あらすじと感想

ムンバイにあるスラム街ダラビで、主人公は警察に連行された。クイズ番組 W3B (Who Will Win A Billion?)で全問正解し高額な賞金を勝ち取った Ram は、不正に回答した疑いをかけられ逮捕され拷問を受けたのだ。そこへ女性弁護士が助けに現れ、教育のない孤児のウェイターがなぜ正答できたのか、彼の生い立ちと共にその謎が語られる。

 

18年前のデリーの街で、生後すぐの赤ん坊が孤児院に捨てられた。彼はようやく養子縁組先に決まった Thomas 夫婦にも捨てられ、イギリス人神父の Father Timothy に引き取られていく。神父はヒンズー教、イスラム教、キリスト教からそれぞれ名を取り、彼を Ram Mohammad Thomas と名付けた。Ram は教会で平和な幼少期を送るが、その善良な神父はゲイの同僚を咎めて殺され、その実自身も密かに結婚していたことが明らかになる。

 

Ram は孤児院に送られ、 そこで Salim と出会い親友になる。彼はイスラム教という理由で家族を殺され孤児になるが、Bollywood の映画俳優になることを夢見ていた。やがて、Sethji に選抜され二人は明るい未来を夢見てムンバイに移るが、連れられた先で出会ったのはなぜか全員が障害を持つ子供。騙されていたことを知り、あわや自分たちも盲目にさせられる寸前に逃げ出した。Ram は女優の Neelima Kumari の使用人になったものの、悲劇の大女優は老いることを恐れ自殺。二人の住むショール (安アパート)では、 隣部屋の娘を性的暴行から救うため、酒浸りの父親 Shantaram を突き落とし、 Ram は Salim を残して一人逃走した。

 

Ram はデリーの街で、オーストリア人外交官 Colonel Taylor に雇われ信用を得る。しかし、主人はスパイであることが判明し国に送還。貯まった給料で Salim に会いにムンバイに向かうと、列車の中で強盗にすべてを奪われ、同乗した家族の娘を救うため犯人を撃って逃走する。行きついたアグラの街では、言語障害の Shanker と出会い友達になるが、彼は狂犬病を発症し、実の母親に見捨てられ死んでしまった。タージマハルの違法観光ガイドになった Ram は、金持ちの大学生に連れられ売春宿に行き、そこで出会った Nita と恋に落ちる。家族で最もきれいな娘が売春婦になるのが彼女たちの風習で、Ram は彼女を自由にするため(実は Nita と Neelima を虐待していた Prem Kumar に復讐するため)、クイズ番組に出演することを決めたのだった。

 

・・・と、クイズの問題の順に時系列が前後して進むストーリーを、再度並び直して主人公の半生を追ってみた。全問終わったところで、見事に一つ一つのピースが埋まり Ram の18年が完成する。クイズ番組の答えは偶然にも、そんな彼の辿ってきた波乱万丈の人生の中で見たもの、出会ったもの、学んだものであった。そして窮地に陥った時に運命を託したのは、ポケットに忍ばせた幼い時手相見の老人にもらった1ルピーコインだった。(日本語タイトルは、"ぼくと1ルピーの神様")

 

著者はインド人外交官で、2005年の発行。ページをめくると描かれているのは、貧困、スラム、殺人、虐待・・・。貧しい者はうそをついて生きていかなければならない現実がある一方で、富める者は欲のかたまり。物語はもちろんフィクションだが、これが発展途上のインドの現実だろうか。しかし、読んでいて重い感じは全くない。ストーリーは涙あり、笑いあり。しかも、Ram も Salim も貧しくとも素直で優しく賢くて、懸命に生きていることが伝わってくる。特に、善良なイギリス人神父の下で幼少期を過ごしたことは、Ram にとって幸運だった。その時に覚えた英語と複数の宗教の入り混じった名前は、後の人生で大いに助けとなる。

 

Prologue より~何てナンセンスな名前なんだと警察にばかにされるRam

  "Ram Mohammad Thomas - what kind of a nonsense name is that, mixing up all the religions? Couldn't your mother decide who your father was?"  

 

The Burden of a Priest より~

父親のように感じていた神父が死んで、Ram は本当の孤児になったと悲しむ 

  "Because today I have really become an orphan," I reply. "He was my father. Just as he was Father to all those who came to this church.

 

A Thought for the Crippled より~

取っておいた100ルピー札を盲目の少年に差し出す Salim と Ram

  As the empty-handed singer is about to pass our side, Salim takes something from his front pocket. He holds it in a clenched fist and looks guiltily at me. I nod silently. With a pained expression, Salim opens his fist over the singer's outstretched hand. A crumpled, hundred-rupee note drifts into the beggar's bowl.

 

大都市デリーとムンバイの喧騒、華やかなの映画産業、観光客で賑わう世界遺産のタージマハル、悲惨な印パ戦争の回想・・・。これ一冊で混沌としたインドが肌で感じ取れるようだ。何より、それぞれのエピソードごとにあっと驚かされる結末が待っていて、おもしろくない章が一つもないのだ。(最後に、突然助けに現れた、見ず知らずの弁護士の正体が明かされる!) 英語も読みやすく、文句なしに楽しめた一冊。アカデミー賞を受賞した映画版の "スラムドッグ$ミリオネア" も是非見てみたい。

2019.11

外務省地図より

Alice's Adventures in Wonderland

(不思議の国のアリス)

Lewis Carroll

Illustrations by John Tenniel

★☆☆  英語難易度

ウサギ穴に落ちたアリスが繰り広げるファンタジー


あらすじと感想

あまりに有名でディズニーの映画でも馴染みがあるこの童話は、150年以上前の1865年刊。イギリスの数学者であった著者が友人とその子供たちとピクニックに行った際、少女アリスに語った冒険物語をまとめたものだという。知っているようでよく知らなかったこのおとぎ話を、今回初めて原書で読んでみることにした。

 

ある日、白ウサギを追いかけて穴に落ちたアリスは、(1.Down the Rabbit-Hole)

小瓶を飲んで小さくなり、ケーキを食べて大きくなってしまう。(2.The Pool of Tears)

涙の池から上がると動物たちと競争し、(3.A Caucus-Race and a Long Tale)

家にはまったアリスの所にトカゲのビルが来る。(4.The Rabbit Sends in a Little Bill)

森で出会ったイモムシに不思議なキノコを教えられ、(5.Advice from a Caterpillar)

侯爵夫人の家で胡椒を使う料理人とチェシャ猫に会う。(6.Pig and Pepper)

 

三月ウサギ、帽子屋、ネムリねずみと変なお茶会を開き、(7.A Mad Tea-Party)

トランプに死刑宣告する女王とクロッケーの試合。(8.The Queen's Croquet-Ground)

にせウミガメの学校の教訓話を聞き、(9.The Mock Turtle's Story)

ウミガメとグリフォンがロブスターのカドリールを踊る。(10.The Lobster Quadrille)

ハートの女王のタルトが盗まれ裁判が行われ、(11.Who Stole the Tart?)

証人に呼ばれたアリスが悲鳴を上げると夢から覚めたのだった。(12.Alice's Evidence)

 

次々と登場するキャラクターたちはいずれも風変わりで、ストーリーも脈略がない。会話は言葉の揚げ足取りのようで滑稽だ。ファンタジーだからそれを楽しめばよいのだが、あらすじを知らなかったら読むのに苦労しただろう。しかし、時々検索をかけながら読み進むと、ディズニーのアニメでは全く気付かなかったナンセンスな言葉遊びが随所にちりばめられているのが見えてきた。

 

Chapter 6 より~チェシャ猫は ”猫のない笑い” を残して消えた

  "All right," said the Cat; and this time it vanished quite slowly, beginning with the end of the tail, and ending with the grin, which remained some time after the rest of it had gone.

  "Well! I've often seen a cat without a grin," thought Alice; "but a grin without a cat! It's the most curious thing I ever saw in all my life!"

 

Chapter 9 より~授業数は(lesson)は毎日少なくなる(lesson)

  "And how many hours a day did you do lessons?" said Alice, in a hurry to change the subject.

  "Ten hours the first day", said the Mock Turtle: "nine the next, and so on."

  "What a curious plan!" exclaimed Alice.

  "That the reason they're called lessons," the Gryphon remarked; because they lesson from day to day."

 

ナンセンスなストーリーや、ハートの女王がすぐに処刑宣告したりするちょっと怖い展開は、マザーグースの世界観と同じ。John Tenniel による挿絵も、かわいいアニメ版とは違ってクラシカルで少々不気味な感じだ。英語自体は簡易だが、十分に理解して楽しむにはプラスアルファの知識も必要な高度な児童文学だった。

2019.10

Wikipedia より

The Woman in the Dunes

(砂の女)

Kobo Abe

Translated by E.Dale Saunders

★★★  英語難易度

砂穴の家から脱出を試みる男を描いた ”砂の女” の英訳版


あらすじと感想

砂丘に昆虫採集に出かけた主人公の男は、村人から砂穴の底にある古びた家に案内された。しかし翌朝になり、彼は一夜の宿と思っていたその家に閉じ込められていたことを知る。そこに住む女は、埋もれていく家の砂を毎日掻き出すのが仕事で、働き手として男を引き留めようとする。男は何とか脱出を試みるが、砂穴の壁を這い上がることはできない。二人の様子は穴の上から村人に監視され、砂掻きを休むと水の供給が止められた。男は女をだましてついに穴から這い出したものの、砂丘をさまよい砂に埋もれ、再び村人に捕らえられて元の穴底の家に降ろされる。そして、いつしか穴の生活を受け入れていくようになり・・・。

 

日本文学の英訳版をもう1冊。今回は初めて読む安部公房に挑戦。難しい英単語が多く、あらかじめ日本語であらすじを読んでいなかったら、意味がつかめなかったかもしれない。理不尽な状況から脱却しようともがく男の描写が延々と続いて、途中で挫折したくなったが、興味本位でこの奇抜なストーリーを追いたい気持ちが勝り、最後までたどり着くことができた。男女が砂と汗に紛れ狭い空間に閉じ込められるという設定。再度日本語で解説を検索しなければ、単に "キモイ" 小説で終わってしまいそうな内容だ。昔読んだカフカの "変身" と似たような難解性だと思ったら、実際に著者はカフカに影響を受けていたという記述があった。安部公房はノーベル文学賞候補にもなった作家。彼の代表作である本作は、人間存在の究極の姿を追求しているという。一流文学と変態性は表裏一体というのが凡人の率直な感想ではあるが。

2919.10

Thousand Cranes

(千羽鶴)

Yasunari Kawabata

Translated by Edward G. Seidensticker

★★☆  英語難易度

ノーベル文学賞作家、川端康成による "千羽鶴" の英訳版


あらすじと感想

趣向を変えて、日本文学の英訳版にトライしてみようと検索をかけると、村上春樹や東野圭吾等の他は、夏目漱石、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎などの作品が上がってきた。そこで、まだ読んでいなかった川端康成の千羽鶴に挑戦。どうやら男女のどろどろ劇のようだが、果たして・・・。

 

主人公菊治の父と太田夫人は愛人関係。父が亡くなると、今度は息子の菊治と太田夫人、その夫人が自殺すると、最後には夫人の娘ふみ子と菊治が・・・というのが物語の流れであった。その中で、お茶の師匠で父のもう一人の愛人であった栗本が、菊治の見合い相手としてゆき子を勧め干渉してくる。小説の冒頭からして、幼い菊治が、栗本の胸のあざを見てしまうという少々グロテスクな回想シーン。

 

しかし、そのどろどろした人間関係は、小説の中で見事に芸術になっていたのである。ストーリーの持つ背徳感は、故人の形見である茶碗の幻想感と一体化して描かれ、高尚な文学の世界が出来上がっていた。英訳版で読んでもノーベル賞作家の世界観は十分に伝わってきて、以前日本語で読んだ "雪国" の読後感のようだと思い出した。そして、はるか源氏物語のころから不倫は文学の普遍的テーマなのだと、そんなことも思いながら読んだ。

2019.10

The Voyages of Doctor Dolittle

(ドリトル先生航海記)

Hugh Lofting

★☆☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

動物と話ができるドリトル先生が、再び冒険の航海へ出るシリーズ2作目


あらすじと感想

貧しい靴屋の息子トミー・スタビンズは、敬愛するドリトル先生の家に住み込みで弟子入り。そこへ、purple bird of paradise のミランダから、インディアンの学者ロング・アローが行方不明との知らせを受ける。彼を救出するため、ドリトル先生とスタビンズは犬のジップ、アフリカから戻ってきたオウムのポリネシアと猿のチーチー、そしてオックスフォードに留学していたジョリギンキ国の王子ボンパと共に、ブラジル近海のSpider Monkey Island に出航する。

 

航海はまたも難航。途中嵐で船が大破するが、ようやく海に浮かぶ Spider Monkey Island に到達すると、洞窟に閉じ込められたロング・アローを救出した。南へ流され気温が低下していく島を押し戻し、島の部族の戦いを収束させ、ついには王に選ばれてしまったドリトル先生は、2年もの間島のために尽くす。最後は海カタツムリの殻の中に入って海を進み、一行は故郷のパドルビーまで戻ってきたのだった。(以上あらすじ)

 

ドリトル先生シリーズの第2作目。物語は語り手スタビンズ少年による1作目執筆の経緯から始まり、前作で活躍した愛着ある動物たちも再び登場する。動物と話ができるドリトル先生の一行は奇想天外な冒険旅行を繰り広げ、今度はこう来たか、というようなアイディアでトラブルを解決し読者を惹きつける。(裁判で犬の通訳をして知人の無罪を勝ち取るエピソード、などなど。)第1作同様、生き生きした描写が魅力で、言葉遊びのような風変わりな単語の意味がわかるのも、原書ならでは。

 

PART 1-5 より~Oxford を Bullford と間違えたポリネシア

  "His father, the king, sent him here to a place called, er, Bullford, I think it was, to study lessons."

  "Bullford... Bullford" muttered the Doctor. " I never heard of the place...oh, you mean Oxford."

  "Yes, that's the place---Oxford," said Polynesia.

 

PART 5-9 より~王に選ばれたドリトル先生はジョング・シンカロットと改名

  "(略) They didn't think that Dolittle was a proper or respectful name for a man who had done so much. So you are now to be known as Jong Thinkalot. How do you like it?"

 

なるほど、確かに Dolittle は Do little、ほとんど何もしないという意味で、ここで Thinkalot をカタカナ表記したら面白みが伝わらない。ox と bull を混同してしまったオウムのポリネシアにもクスッと笑える。

 

人にも動物にも優しく正義感に溢れたドリトル先生の人柄、世界地図を広げたくなるような壮大なスケールの航海、動物の生態や科学的知見への好奇心をそそるストーリー。著者はロンドンとアメリカのMITで工学を学んだ経歴の持ち主だそうだ。インディアン等の表記で論争になった時期もあったようだが、第2作はシリーズの中でも代表作らしく、第2回ニューベリー賞を受賞している。子供のころ楽しめなかったドリトル先生シリーズを、今頃になって原書で堪能できた!

2019.10

The Story of Doctor Dolittle

(ドリトル先生アフリカゆき)

Hugh Lofting

★☆☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

動物と話ができるドリトル先生シリーズの第1作目。


あらすじと感想

沼のほとりのパドルビーに住む医者のドリトル先生は、大の動物好き。家は多くのペットで溢れ人間の患者が寄り付かなくなり、オウムのポリネシアに動物の言葉を習うと、動物のお医者さんになってしまった。ある日、アフリカのサルたちが伝染病に苦しんでいるという知らせを受け、ドリトル先生は犬のジップ、アヒルのダブダブ、豚のガブガブ、フクロウのトートー、サルのチーチー、オウムのパロット、そしてわにを連れてアフリカへ出航する。

 

アフリカに到着するも船が大破してしまった一行。ジョリギンキ国の王に捕らえらてしまうが、ポリネシアの機転で脱出すると、ようやくたどり着いた猿の国で多くのサル達を助けることができた。帰路に再び捕らえられるが、王子ボンパの助けで出航にこぎつけ、途中海賊の襲撃に巻き込まれると、逆に彼らの船を奪うことに成功。捕らえられていた少年と行方不明のおじを救い出し、無事パドルビーの自宅に戻ったのだった。(以上あらすじ)

 

ドリトル先生シリーズの第1作。アメリカで活躍したイギリス出身の作家、ヒュー・ロフティングにより1920年に発表された児童文学で、文中の挿絵も作者による。

小学校の図書館に、日本語訳版のドリトル先生シリーズが並んでいたのを今でも覚えているが、私は動物と話をするお医者さんの冒険物語なるものが全く楽しめない、かわいくない子供だった。読書の楽しみを知ったのは、もっと大人のどろどろした人間社会を描いた小説に出合ってからだったような。さて、時は流れ、その人間社会に疲弊気味の現在の私は、動物が最高の癒しになっている始末。ということで、ドリトル先生の原書を手に取ってみることになった。

 

CHAPTER ONE より~冒頭

  Once upon a time, many years ago -- when our grandfathers were little children -- there was a doctor, and his name was Dolittle -- John Dolittle, M.D. "M.D." means that  he was a proper doctor and knew a whole lot.

  He lived in a little town called Puddleby-on-the-Marsh.

 

ほのぼのとした書き出しの冒頭部。ページをめくると登場するのはいずれも愛らしい動物たちで、その名前も魅力的だ。”his favorite pets were Dab-Dab, the duck; Jip, the dog; Gub-Gub, the baby pig; Polynesia, the parrot; and the owl, Too-Too." 筋を追うと、オウムに言葉を習うというのも理にかなっているし、動物たちはをれぞれの特性を活かしてストーリー中で活躍する。アフリカのサルを救ったお礼として連れて帰った "pushmi-pullyu" は、2つの頭を持つ珍しい動物。調べてみると、push me, pull you と、胴体の前後の頭がお互いに押したり引いたり、井伏鱒二訳では "オシツオサレツ” だそうだ。平易な英語なのに生き生きした描写。世界中の動物に愛される心優しい英国紳士のドリトル先生の物語は、大人が楽しむにも十分な児童文学だった。

2019.9

Born a Crime :

Stories From a South African Childhood

(トレバー・ノア 生まれたことが犯罪!?)

Trevor Noah

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

アパルトヘイト下の南アフリカで育った米コメディアンの自伝


あらすじと感想

トレバー・ノアは1984年、アパルトヘイト下の南アフリカ、ヨハネスブルクで黒人の母親と白人(スイス・ジャーマン)の父親の間に生まれた。彼は不条理な環境下でも、持ち前の知恵とユーモアで差別や貧困を乗り越え成長していく。そんな彼の原点は、たくましく、バイタリティに溢れた母の存在だった。アメリカで人気のニュース番組 "The Daily Show" の司会を務めるコメディアン、トレバー・ノアの南アフリカでの半生を描いた、NEW YORK TIMES 2017 ベストブック。

 

本書をまず開くと、最初から衝撃的な1ページ。

"IMMORALITY ACT, 1927"

(略)1. Any European male who has illicit carnal intercourse with a native female, and any native male who has illicit carnal intercourse with  a European female...shall be guilty of (略)

 

つまり、トレバーが生まれたこと自体が犯罪!? 子供が欲しかった母親は、敢えて犯罪を犯してトレバーを出産し、幼少期の彼は人目につかないように育てられた。トレバー10歳の時、アパルトヘイト(1948年から1994年) は撤廃される。

 

Chapter 2 Born a Crime より~

南アフリカではカラード、黒人、白人、インド人に大別される

In South Africa mixed people came to be classified as (略) what we call "colored." Colored people, black people, white people, and Indian people...

 

アメリカでは黒人と白人の混血は黒人の扱いになるが、南アフリカでは新たに ”colored" という枠がある。マイノリティのカラードとして生まれたトレバーは、子供ながらに日々生きづらさを感じていた。そんな彼の助けになったのが言葉トレバーの幼少期のころから 母親が英語やアフリカの部族の複数の言語などを使い分けていたので、彼も多くを習得する。そして、White や Black の間もうまく行き来して、カメレオンのように世の中を渡り歩く術を身に着けていったようだ。

 

Chapter 4 Chameleon より~母親に言わせれば、お金になる英語は第一言語

My mom made sure English was the first language I spoke. (略)English is the language of money.

 

Chapter 17 より~ネルソン・マンデラ曰く、相手の言葉で話せば心に通じる

 Nelson Mandela once said, "If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his language, that goes to his heart."

 

南アフリカの地名や民族など、初めのうちは聞きなれない単語にとまどったが、英語自体は読みやすく、コメディアンのトレバー本人に話しかけられているような文体だ。信仰熱心な母親にさんざん教会に連れていかれた幼少期、商売上手で器用に小遣い稼ぎをしていた学校時代、バレンタインデーやプロムでの残念なエピソード、闇商売に刑務所・・・。いづれも貧しく厳しい環境下での日々が、笑いを誘うように語られていて暗さがない。さすが全米で人気のコメディアン。そして、母親と義父との理不尽な関係を綴った最終章 MY MOTHER'S LIFE では、壮絶さがMAXに。トレバーの原点は、どうやら彼の肝っ玉母さんのようだ。

 

Chapter 8 ROBERT より~実父に再会したトレバー

  "I've been following you," he said, and he opened it up. It was a scrapbook of everything I had ever done, every time my name was mentioned (略)

He was smiling so big as he took me through it, looking at the headlines.

 

私は次第に疎遠になっていった実の父親のその後が気になっていたが、トレバーが20代になって10数年ぶりにケープタウンで再会していた。アパルトヘイト故、普通の家族にはなれなかったが、成長し成功した息子を誇らしく思っているとわかりうれしくなった。不幸も笑いに変えてアメリカンドリームを勝ち取ったトレバーに脱帽!

2019.9

Wikipedia より

I Can Explain Everything:

Confessions of a Pet Capybara

Stacy Winnick

★★☆  英語難易度

ペットカピバラDobbyがカピバラの飼育方法を伝授。


"Celeste and the Giant Hamster" に続いて、大好きなカピバラ本をもう一冊。何と主人公 Dobby は、実際に ”Celeste・・・" に登場したカピバラの Caplin の弟とのこと。本書はカピバラの生態を始め、アメリカ郊外での飼育の苦労話などが Dobby 自身によって語られている飼育本。食べ物のこと、トイレのことから、車に乗って動物病院に行くエピソードなどなど、飼い主の ”Farm  Manager" とカピバラの日常がユーモアたっぷりに綴られている。最初の6カ月くらいを過ぎると、あっという間に巨大に成長するカピバラ。犬や猫と違い、カピバラをペットとして飼うのはまだまだ珍しく、We are tame wild animals, not domestic pets. というのが上手く言い当てているなあと。かわいいカピバラの挿絵をもっと増やしてほしかった。

2019.6

The Adventures of Celeste the Cat

Celeste and the Giant Hamster

Melanie Typaldos

★★☆  英語難易度

カピバラを捕まえたい猫たちの冒険。


あらすじと感想

猫のセレステは9歳の女の子セレステの家族に飼われていて、家にはハムスターのセレスティーナもいる。家族の会話から近くにジャイアントハムスターがいることを聞きつけ、自分たちで捕まえようと近所の猫タイガーとルビーと共に外に繰り出した。果たして、そのジャイアントハムスター、実はカピバラのキャプリンは、想像したよりずっと大きく捕獲作戦は難航するが、恐ろしいモンスターでないこともわかってきた。8匹の赤ちゃんカピバラが生まれると、悪猫たちの攻撃に立ち向かい、あわやのところで人間たちに助けられたのだった。(以上あらすじ)

 

テキサス在住の著者のペットカピバラ、Caplin Rous が物語に登場。と言っても、メインは3匹の猫たち。あの手この手でカピバラを捕まえようとドタバタ劇を繰り広げる。カピバラの生態や温和な性格がお話の中に盛り込まれているものの、カピバラファンとしてはもっと Caplin に活躍してほしかった。そこはちょっと残念。そういう意味では、私のお気に入りの絵本で、何と著者も巻末で推薦している "Capybopy" はカピバラの魅力が満載!

2019.6