英語の洋書と絵本 ANNIE'S BOOKSHELF

 MY BOOKSHELF 5

                                               41-50

Norwegian Wood

The Da Vinci Code

Sex and the City

I, Robot

The Shawshank Redemption

The Graduate

The Chronicles of Narnia

ROOM

Flat-out Love

When the Wind Blows

Norwegian Wood

(ノルウェィの森)

Haruki Murakami

★☆☆ 英語難易度

村上春樹のベストセラーの英訳版。


あらすじと感想

37歳の主人公 Watanabe は、ハンブルグの空港で流れていたビートルズの ”ノルウェィの森” を聴き、学生時代を回想する。1968年、神戸から東京の私立大学に入学し寮生活を送っていた Watanabe は、高校時代の親友で自殺した Kizuki の元恋人で東京の女子大に通っていた Naoko と再会しデートをするようになる。寮の先輩の東大生 Nagasawa は、Hatsumi という恋人がいながら、Watanabe を誘って女遊びを繰り返していた。

 

Watanabe は、突然連絡が取れなくなった Naoko が、京都の療養所にいると知り会いに行く。彼女は同室の Reiko と療養生活を送っていて、彼女も複雑な過去を背負っていた。一方で彼は大学の 同級生の Midori とも親しくなっていて、Naoko と Midori の間で感情が揺れる。その後、Watanabe は寮を出てアパートに移り Naoko を待つが、やがて、Reiko から Naoko が自殺したという知らせが届く。療養所を出た Reikoは Watanabe と東京のアパートで再会した後、北海道に発つ。最後、Watanabe は Midoriに、最初から二人で始めたいと伝える。(以上あらすじ)

 

村上春樹による長編小説。1987年刊行のベストセラーで、2010年に映画化。

村上作品は出版されるたびに話題になるので、主な作品は日本語版をだいたい読んでみたが、実のところ私は彼の作品が苦手である。私の単純な思考では彼の作品をどうとらえてよいかよくわからないのだが、ノルウェィの森は読みやすかった記憶があり初めて英語版に挑戦してみた。

 

果たして・・・”Norwegian Wood" は、昔読んだ”ノルウェィの森”だった。細部はほとんど忘れていたのだが、文学的な秀逸な描写の中に時折混じる女の子たちの大胆な会話に驚愕しつつ、著者の独特の世界観を思い出した。著者が好きだというフィッツジェラルドの ”グレイト・ギャツビー” が作品中に登場し、そう言えば同じような作風だと感じた。

 

第3章より~愛読書は〝グレイト・ギャツビー” 

Gatsby stayed in first place for a long time after that. I would pull it off the shelf when the mood hit me and read a section at random. It never once disappointed me. There wasn't a boring page in the whole book. I wanted to tell people what a wonderful novel it was, but no one around me had read The Great Gatsby or was likely to.

(略)

 When I did finally meet the one person in my world who had read Gatsby, he and I became friends because of it. His name was Nagasawa.

(略)

 ”This man says he has read The Great Gatsby three times," he said as if to himself. "Well, any friend of Gatsby is a friend of mine."

 

それにしても、登場人物の相次ぐ死にはさすがに閉口した。Kizuki の自殺から始まり、Naokoも最後に精神を病んで自殺、彼女の姉も若くして自殺している。Reikoは精神病の病歴があり、Midoriの両親は病死、まさかのHatsumi も後に自殺する。(これではアガサ・クリスティーではないか)これは果たして純文学なのか。もし、著者がノーベル文学賞を受賞し、将来本作が高校の教科書などに掲載されたら・・・。夏目漱石の”こころ”に倣って感想文の課題でも出されたときには、生徒たちは悩むだろうなと、そんなことを考えてしまった。

 

英語学習としてはどうだったかというと、”ダ・ビンチコード” の後に読んだこともあり非常に読みやすかった。単語の難易度もさほど高くなく、ストーリーも平易で会話文が多い。更に東京の地名が頭に入っているし、早稲田大学がモデルということで当時の大学生の様子にも興味がある。何だかんだ言いながら一気に読んでしまった。

                                   2017.4

The Da Vinci Code 

(ダ・ヴィンチ・コード)

Dan Brown

★★★  英語難易度

(^^)/  お薦め

ラングドン教授と暗号解読官のソフィーが、キリスト教に隠された聖杯の秘密を解き明かす。


あらすじと感想

ルーブル美術館で襲撃された館長のジャック・ソニエールは、死の間際に自分がダヴィンチのウィトルウィウス的人体図の形で横たわり、暗号としてメッセージを残す。犯人はカトリックの一派であるオプス・デイの修道僧シラスだ。フランス司法警察はその夜館長と面会予定だったハーバード大の宗教象徴学教授のロバート・ラングドンに疑いをかけ、現場に同行させる。そこに館長の孫娘で暗号解読官のソフィー・ヌヴ―が駆けつけ、暗号は自分に託された秘密のメッセージであると確信し、機転を利かせてラングドンと共に逃走する。

 

暗号を解き、ダヴィンチの”岩窟の聖母”の絵の裏から見つけたパリのスイス銀行の鍵で、二人は金庫から筒状のクリプテックスを発見し脱出に成功する。その夜、パリにいるラングドンの友人でイギリスの歴史学者レイ・ティービングの屋敷に保護を求める。ティービングはシオン修道会に守られた聖杯の秘密を追っていて、聖杯とはイエス・キリストの血脈を宿したマグダラのマリアの子宮であり、キリストに子孫がいるという教会にとって不都合な真実を世にあばこうとしていた。壁画 ”最後の晩餐” にもその事実が暗号(コード)として残され、聖杯探求とはマグダラのマリアの遺骨の前でひざまずくこと、そして二人の見つけたクリプテックスの中にこそ、聖杯の隠し場所の答えがあるという。

 

シラスが屋敷に押し入りフランス警察が迫ると、執事のレミイと共にティービングの飛行機でイギリスへ逃亡する。一同はクリプテックスのパスワードを探し当てロンドンのテンプル教会へ向かうが、シラスとレミイに襲われクリプテックスが奪われ、ティービングは連れ去られる。ソフィとラングドンはキングス・カレッジの資料館で解を解き、ウエストミンスター寺院に向かうが、果たしてそこには拳銃を向けたティービングが待ち受けていた。彼はオプス・デイの司教アリンガローサと裏でつながり、シラスとレミイを操っていたが、計画の歯車は少しづつ崩れ、追ってきたイギリス警察に捕えられる。

 

最後の暗号を解きスコットランドのロスリン礼拝堂に向かったソフィとラングドンは、両親と共に車の事故で死んだと信じていたソフィの祖母と弟に会う。そこで、ソフィ本人こそがイエス・キリストとマグダラのマリアの直系の子孫であることを告げられた。パリに一人戻ったラングドンはルーブル美術館へ向かう。逆さピラミッドとその下の小型のピラミッドを見て、その場所こそがソニエールの最後の解であると気づく。(以上あらすじ)

 

2003年アメリカで発表されたダン・ブラウンによる推理小説で、2006年トム・ハンクス主演で映画化。

日本語翻訳版が発表され話題になった当時、早速図書館で予約して家族で回し読みした。趣味趣向が異なる家族間で、これは面白いと意見が一致して盛り上がった数少ない小説の一つである。舞台になったパリは過去3度訪れたことがあり、その都度ルーブル美術館に足を運んだ。ロンドンもスコットランドも訪れていて物語に登場する名所にはそれなりになじみがあるし、幼いころ近所の教会学校で聖書の話を聞かされていた経験もある。そんなわけで、スリリングなサスペンスの展開に織り込まれたキリスト教やダヴィンチにまつわる高尚な話題と驚愕のストーリーに、すっかりのめり込んで読んだのを覚えている。もちろん映画版も観た。それから10年以上がたち、長い間読まずに本棚に眠っていた原書を取り出した。上下に分かれたハードカバーの翻訳版は、洋書では1冊のペーパーバックに収まり、細かな文字に躊躇してずっと読み始める勇気が出ないでいた1冊だ。

 

果たして・・・翻訳版と同じく、夢中になって読めたのである。話の筋は覚えているものの、圧倒的な数の専門用語。知らない単語がいくつも続いて出てくることもたびたびあったが、時に調べ時にスル―しながら、忘れかけた細部をじっくりたどった。途中、ティービングの屋敷で彼が聖杯の秘密に関するうんちくを長々と続けるところで座折しそうになったが、そこを乗り越えるとまた一気に読めた。ただし、何の知識もなしにいきなり原書に取り掛かったら、私の英語力ではかなり困難を極めたと思う。サスペンスとしては読めても、全くの消化不足で終わってしまったはずだ。(時々登場するフランス語での記載にもまごついた。)

 

それにしても、どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのか。いったい教会や多くのキリスト教徒はこの作品をどのように感じているのか。日本人の私には見当もつかず、ただ圧倒されて煙に巻かれたようなそんな読後感だ。これだけの内容を2時間強に収めた映画版には無理があり、本を読まずして詳細を理解することは到底困難であると思う。最後に、同じ女性として知的なソフィーにすっかり憧れて魅了された。久しぶりにどっぷり読書に浸ったので、これを書くに当たり再度翻訳版を借りてきて、下記に越前敏弥の日本語訳を記すことにした。

 

CHAPTER 58より~

 "The legend of the Holy Grail is a legend about royal blood. When Grail legend speaks of 'the chalice that held the blood of Christ'...it speaks, in fact, of Mary Magdalene--the female womb that carried Jesus' royal bloodline." 

聖杯伝説とは、王家の血の伝説だ。聖杯伝説が、”キリストの血を受けた杯” について語るとき、それが指しているのは、マグダラのマリアーーイエスの聖なる血脈を宿した子宮なのだよ」

 

CHAPTER 105より~

Incredibly, both had been from Merovingian families--direct descendants of Mary Magdalene and Jesus Christ.

信じがたいことに、ソフィーの両親はふたりともメロヴィング王家の出身ーマグダラのマリアとイエス・キリストの直系の子孫だったという

 

EPILOGUEより~  

The quest for the Holy Grail is the quest to kneel before the bones of Mary Magdalene. A journey to pray at the feet of the outcast one.

聖杯の探求の目的は、マグダラのマリアの遺骨の前でひざまずくことだ。貶められ、失われた聖なる女性に心からの祈りを捧げるために、旅をつづけたのだよ。

                              2017.3

Sex and the City

Candace Bushnell

★★☆ 英語難易度

ニューヨークに住む女性のリアルな姿を描いたエッセイ集。


1998年から2004年にかけてアメリカで放映され、社会現象にまでなったラブコメディテレビドラマの原作。

2016.

I, Robot (われはロボット)

Isaac Asimov

★★☆  英語難易度

アイザック・アシモフによるSF短編集。


1950年発行。遊び相手はいつもロボットのロビー、という娘のグロリアを心配する両親が、いろいろと策を練る、”ROBBIE"。 他、全9作を収録。

2016.

The Shawshank Redemption

( ショーシャンクの空に)

Stephen King

★★☆  英語難易度

無実の罪でショーシャンクの刑務所に送られたアンディが、脱獄し自由を手にするまで。


あらすじと感想

1947年、アメリカ。銀行副頭取のアンディは妻とその不倫相手を射殺したという無実の罪に問われ、ショーシャンク刑務所に送られる。劣悪な環境下で生傷が絶えない中希望を捨てず、彼は服役仲間のレッドから趣味用の小型ハンマーとリタ・ヘイワ―スのポスターを調達してもらう。やがて、刑務官に税の知識と手腕を買われ図書館勤務となる。そんな中、彼は真犯人の情報を耳にするも、所長は取り合ってくれない。ある朝、点呼の時にアンディがいなくなっていることが発覚するが、ポスターの裏からはハンマーで掘られた穴が出現し、彼は脱獄に成功していたのだった。(以上あらすじ)

 

ホラー小説で有名なスティーブン・キングは、1947年生まれのアメリカの作家。4つの短編が納められた ”Different seasons" の1作目で、1994年映画化されているが、本書はホラーの扱いではない。

 

物語は終始、服役中に仲良くなったレッドの語り口調で回想される形で進む。前半は刑務所内の重い空気が続き、刑務所用語も難解で途中で挫折しそうになった。日本語のあらすじを読んでいなかったら、遠回しな表現が理解できなかったかもしれない。(もとのタイトル ”Rita Hayworth and Shawshank redemption" の単語の意味すべてを調べることから始まった。Rita Hayworthは、当時の人気女優の名前、Shawshank は、北東部メイン州にある刑務所のある地名、redemption は贖罪。) 途中、真犯人の情報を得てからはすっかりのめり込みその展開に感心しきりだった。You Tube の映画を覗くと、小説と同様重苦しい前半から一転、最後の脱出劇は圧巻だ。映画版は、アンディと仮釈放できたレッドがメキシコの青い海辺で実際に再会するラストシーンで終わっていた。

                                   2016.6

The Graduate (卒業)

Charles Webb

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

エリート青年ベンジャミンは自分の将来を見失い、幼馴染の母親と不倫に走る。


あらすじと感想

ベンジャミンは、アメリカ東海岸の大学を優秀な成績で卒業したものの、自分の人生に価値を見出せず悩んでいた。帰省した家での卒業パーティで、父親の仕事仲間であるロビンソン氏の夫人が近づき誘惑してくる。夫人は幼馴染エレーンの母親でもあった。しばらく自分探しの旅に出るものの、何も見出すことができず帰宅したベンジャミンはロビンソン夫人との不倫に走ってしまう。大学の休暇で帰省したエレーンをデートに誘うよう両親に強要されたベンジャミンは、純真な彼女にも好意を持ち、ついに夫人との関係をエレーンに告白する。怒ったエレーンは大学へ戻るが、ベンジャミンは彼女と結婚しようと決心。急遽決められた別の男との結婚式で、ベンジャミンはエレーンを奪いバスに乗り込む。(以上あらすじ)

 

ダスティン・ホフマン主演の映画は1967年。教会から花嫁を奪還するラストシーンとサイモン&ガーファンクルの音楽が有名だ。

若者は古今東西、いつの時代も悩むもの。良い家庭で育ちエリート人生を送ってきた主人公も、大学を卒業してこれからというとき人生の意味を見失う。アメリカの大学は卒業が大変であるあら、日本であればちょうど勉強一筋に頑張って東大に合格したとたん、やる気を失ってしまうような感じだろうか。ここまではよくあることだ。

 

CHAPTER 1より~ベンジャミンは大学を卒業し、大学院に進学するはずだった。 

"He 's in Harvard and Yale," his mother said. "And what's that other one?"

"Columbia."

 

学生時代の数々の業績は無意味に思えてくる。 

Captain of the cross-country teamHead of the debating clubFirst in his class."

"I was't first."

"Oh?"

"I tied Abe Frankel for first."

"Oh," she said. "Now let's see what else. One of the editors of the school newspaper. Student teacher. I'm running out of fingers. Social chairman of his house. And that wonderful teaching award."

(略)

”The whole four years," he said, looking up at his father.

"They were nothing. All the things I did are nothing. All the distinctions. The things I learned. All of a sudden none of it seems to be worth anything to me."

 

CHAPTER 2より21年間学校と図書館との往復の人生に何の意味があるのか

 "Dad," Benjamin said. "for twenty-one years I have been shuffling back and forth between classrooms and libraries. Now you tell me what the hell it's got me."

 

しかし、彼は何と不倫に走る。相手は幼馴染の母親だ。向こうから言い寄ってきたのだから、これは彼のせいではない。しかし彼の暴走は止まらず、こんどは娘のエレーンを追いかけることになる。ちょっと待って、いくら何でもそれではストーカーだ。ところが、バークレーに通うエレーンは母親に似ず純真で、自分の親と不倫に走ったベンジャミンのことを嫌いにならないのだ。花嫁を奪うラストだけを見ると、ロマンチックなシーンなのだが、そこまでのいきさつが無謀で、この二人絶対この後上手く行くはずないな、などと思いながら読んでいた。

 

さて、この有名な映画の原書の素晴らしいことは、英語が簡単だったこと。今まで読んできたものの中でも1.2を争う読み易さだった。ストーカーベンジャミンにイライラさせられても何のその。すらすら読めて大満足。この人生に悩む若者の青春物語は、洋書入門者にかなりお勧めであることがわかった。

                                                                                                2016. 6 

♪The Sound of Silence ( Simon & Garfunkel  ) 

    ピアノ:アニー

The Chronicles of Narnia 

The Lion, The Witch and The Wardrobe 

(ナルニア国物語  ライオンと魔女)

C.S.Lewis

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め 

ナルニア国で繰り広げられる4人兄弟のアドベンチャー。


あらすじと感想

舞台はイギリス。ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーの4人兄弟姉妹は、ロンドンの空襲を避けるため、田舎の大きな屋敷に疎開する。そこで4人は、大きな衣装タンスの奥に雪の別世界ナルニア国があることを発見。そこは魔女によって支配され冬に変えられた世界で、エドマンドは魔女の甘い誘いに騙され捉えられてしまう。兄弟3人はライオンのアスランに導かれ、動物たちと共に魔女との対決に向かう。(以上あらすじ)

 

1950年に発表の "ライオンと魔女"は7部作シリーズのナルニア国物語の1作目。2005年の映画が記憶に新しく、大ヒットシリーズのハリーポッターに続いてのファンタジー児童文学の映画化が話題になった。両作品とも子供たちが悪と戦うファンタジーだが、原書に関しては本書の方はるかに読みやすくてお薦めだ。しかも、平易な英語でナルニアの世界が目の前に迫ってくるような生き生きした描写は、まさに一流文学。

 

CHAPTER 1より~冒頭

Once there were four children whose names were PeterSusanEdmund and Lucy. This story is about something that happened to them when they were sent away from London during the war because of the air-raids. 

 

ところで、我が家では私を除いてみんなファンタジー大好き派。余暇にまで真面目な本を読んで何の意味があるのと言われればその通りだ。現実からしばし離れてリフレッシュするという楽しみが分からないと人生損をしてしまうから、これからはファンタジーにももっと挑戦していかなくては。

                                  2016. 5

ROOM(部屋)

Emma Donoghue

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

”部屋”に監禁された女性が生まれた子供と脱出を図るまでを、子供の目線から描いた。


あらすじと感想

Jackは5歳の男の子。天窓だけの ”ROOM" に Ma と住んでいる。テレビは見ているけれど本当の外の世界は知らない。夜になって ”Wardrobe" の中で寝た後、Old Nick が食料を運んでくる。でも本当は、Ma は7年前に Old Nick に連れ去られずっと監禁されているのだ。やがて何とか逃げ出したい Ma は計画を立てる。Jackが死んだふりをして ”Rug" にくるまれて脱出すのだ。あわや計画は失敗と思われたが、奇跡的に救出された。(以上あらすじ)

 

たまたまテレビの画面を見たら、かわいらしい外国の男の子と女優さんが英語で記者会見していた。天才子役ジェイコブ・トレンブレイと、2016年のアカデミー主演女優賞を受賞したブリ―・ラーソン。映画 ”ROOM" の4月からの日本公開のために来日したという。ネットを検索するとアメリカでの女性監禁事件というショッキングな内容だったが、なかなかの感動ものらしいので原書を手に入れることにした。

 

ストーリーは5歳の男の子の目線で描かれソフトなタッチで、スキャンダラスになりがちな事件が、親子の愛の物語に仕上がっていている。Ma が極限状態の中でも愛情を持って Jack を育てているのが伝わってきて、彼は監禁されている認識さえない。テレビを見て過ごすことが多いから子供向けキャラクターもいろいろ登場して、”Dora" (アメリカの最近のキャラクター) は特に彼のお気に入りだ。マザーグースなどもたくさん登場する。

 

物語中盤で脱出劇が始まると、もう息つく暇もなくページをめくる手が止まらない。どうにか助かって、と祈るような気持ちになってくる。”ROOM" に残った Ma が助け出されるところはクライマックス。でも私はその後、Ma が Grandma と再開するところで泣いてしまった。娘の失踪事件によって母も離婚と再婚をしていたが、戸惑う親子を愛情を持って迎え、二人は徐々に社会復帰へと向かうのだ。ショッピングに連れていってもらった Jack が、大好きな Dora のバッグを見つけ抱きしめてしまうシーンが愛らしくてぐっときた。

 

ところで、本書を読み始めた直後、監禁されていた朝霞市の少女が保護されたという報道があり、複雑な気持ちになった。小説は残酷さがあまり前面に出ていないが、実際はずっと過酷な現実があったはず。少女が社会復帰できるよう、マスコミが騒ぎ立てることなく、そっと見守ってあげなくてはと思う。

                                    2016.4

Flat-out Love

Jessica Park

★★☆  英語難易度 

ボストンを舞台にしたフェイスブック時代の軽快なラブストーリー。


あらすじと感想 

今どきのアメリカの大学生の生活を体感してみたくて検索を続けたところ、たまたま本書にたどり着いた。2011年発売とあってフェイスブック時代のテンポの良いストーリー。

 

主人公のジュリーは新しい大学生活を夢見て、オハイオの高校からボストンにやってくる。ところが、契約したはずのアパートがなく、初日からハプニングに見舞われる。幸運にもジュリーは母親の旧友の家に居候できることになった。向かった先はエリート一家。ハーバードで教鞭をとる母と研究者の父、それにに息子のマットは MIT の学生。妹は旅行中の兄 Finn を等身大の段ボールで作った Flat Finn を離さず、少々風変わりだ。

 

アパート探し、科目登録、新学期の様子・・・ 家族や友達の会話がウィットに富んでいて、私の英語力では消化不足で残念。面白かったのは、いかにも MIT っぽいマットのキャラクターだ。洋服に無頓着でオタクっぽいところが、今風のジュリーにはなんとも受け入れがたい。Facebook を通して Finn と交流を深めるうち、彼を好きになってしまうジュリーなのだが、実は、Finn は事故死していて、Facebook に書き込んでいたのはマットだった・・・というストーリーが途中から透けて見えてきた。登場人物は皆いい人たち、最後はハッピーエンドで、心温まる読後感。久々に若返った気分になれた。 

                                                                   

CHAPTER 1より~

居候先の息子でMITに通うマットはあんまりイケてない

He was a bit quirky, she supposed, but Julie guessed that she could be pretty good at handling quirky--she enjoyed a challenge. 

 

Chapter 5より~

ジュリーはマットのオタク系シャツが気になる

She looked up at him dizzily. "Do you have one geeky shirt for every day of the week?"

 "More than that. Don't worry."  

2016.2

When the Wind Blows 

(風が吹くとき)

Raymond Briggs

★★☆  英語難易度

シニカルなアニメで核の恐怖を扱う。


あらすじと感想

イギリスの片田舎でのんびり過ごしていた老夫婦は核兵器が落とされるというニュースを聞き、政府の発行したパンフレットに従いシェルターの準備をする。果たして本当に核はさく裂し、夫婦はお粗末なシェルターに隠れはしたものの放射能の知識まではなく、次第に体が弱っていく。

 

著者は "スノーマン" で有名なイギリスのレイモンド・ブリッグズで、老夫婦の数日間の会話を描いたアニメ本である。出版は1982年でその映画版を30年近く前にイギリスで観ているのだが、アニメとはいえ老夫婦のシニカルな会話が難しく全く消化不足だった。当時一緒に映画を観たイギリス人の友人たちは、核の恐怖を扱ったこの作品をどのように感じていたのだろうか。ところで、その後何年もたって数ある"マザーグース"の中から "When the wind blows" を偶然発見し、本のタイトルが ”マザーグース” からの引用だということを知ったのだった。

                        

Mother Gooseより~Rock-a-bye baby   ねんねんころりよ         

Rock-a-bye baby, on the treetop,     

When the wind blows,  the cradle will rock

When the bough breaks, the cradle will fall,

And down will come baby, cradle and all.

 

ねんねんころりよ 木の上で
風が吹いたら 揺れるのよ
枝が折れたら 落ちるのよ
その時あなたも 揺りかごも みんなそろって落ちるのよ

2016.1