英語の洋書と絵本 ANNIE'S BOOKSHELF

 MY BOOKSHELF 6

51-60

Our Final Invention 

About a Boy

To Dance with the White Dog

The Notebook

SILENCE

Legally Blonde

The Alchemist

Diary of a Wimpy Kid

The Wizard of OZ

LION : A Long Way Home

Our Final Invention 

(人工知能 人類最悪にして最後の発明)

James Barrat

★★☆  英語難易度


Google、IBMが推し進め、近年爆発的に進化している人工知能(AI)。しかし、その「進化」がもたらすのは、果たして明るい未来なのか?ビル・ゲイツやイーロン・マスクすら警鐘を鳴らす「AI」の危険性について、あらゆる角度から徹底的に取材・検証し、その問題の本質をえぐり出した金字塔的作品。 (Amazonより)

About a Boy 

(アバウト・ア・ボーイ)

Nick Hornby

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

独身男と少年の交流をコミカルに描いた全英ベストセラー 。


あらすじと感想

1998年にニック・ホーンビィによって発表、2002年に映画化。

舞台は1993年のイギリス、ロンドン。36歳なのに無職、でもお金の心配がなくて、まるで学生のような気分で独身貴族を謳歌するウィル。一方12歳のマーカスは、今で言えばアスペルガーらしき男の子。授業中突然歌いだしたりするから笑われるし、服も髪型もダサい。流行りの音楽やスポーツのことも何も知らないから、学校でいじめに会う。精神不安の母親フィオナも、(ウィルによれば)女性としての魅力が全くなく、この子にしてこの母親という感じ。

 

そんな全く共通点のない、独身男と男の子との奇妙な交流がコミカルに描かれていて楽しく読める。ウィルが、学校で一人浮いている変わり者のマーカスのことを、面倒に感じつつも突き放すことなくかまってあげているところが微笑ましい。最後に皆がすごく成長するなどという、とってつけたような結末はない。ごちゃごちゃだったパズルのピースがちょっとはまってきて、ほんの少しお互いの気持ちが分かり合えたような、そんな心温まるストーリーだった。

 

英語は読みやすいが、当時流行の音楽やテレビ番組、店やレストランなどがポンポン出てくるので、その点では全くの消化不足。そんな中で、 soap opera (ドラマ)の "EastEnders" (BBCにて1985年よりスタート)を見つけた時は懐かしくて感動した! 昔イギリスでホームステイしていた時に、夕食後の時間帯にいつもテレビで流れていた番組だ。(検索すると現在もずっと続いて放映されているとのこと。) イギリス英語やスラングも満載。jumper がセーターだということは知っていたが、ウィルが流行のアディダスのバスケシューズを買ってあげるエピソードで、trainers がスニーカーのことだと気づかず一瞬戸惑ったり。いけてないマーカスのことは、funny, weird から daft, wally, nuts などなど。不良の上級生エリーが登場してからは、きたない言葉が更にエスカレートする。

 

threeより~マーカスが変なのはママが変だから 

Marucus knew he was weird, and he knew that part of the reason he was weird was because his mum was weird. 

 

sixteenより~前の学校ではいろんな人がいたからマーカスは浮いていなかった

  "What about your old school?"

  "It was different there. Not every kid was the same. There were clever ones and thick ones and trendy ones and weird ones. I didn't feel different there. Here I feel different."

 

読み終えてから、いつものようにYoutubeで映画を覗いてみる。2枚目半のウィル役ヒュー・グラントの絶妙な表情が、文章の緻密な描写以上にはまっていた。マーカスのイケてない服や髪型もおかしかったし、友達になったエリーも想像通りはじけていた。クリスマスのシーンも俳優たちのコミカルな演技に笑えた。マーカスと母親、プラス、別れたマーカスの父親と新しいガールフレンドにその母親。いずれも weird なメンバーの中にウィルが招待され、何ともミスマッチな雰囲気に。

 

最後のエピソードのみ小説と映画が大きく異なっていた。小説ではエリーが陶酔する Kurt Cobain (アメリカの人気ミュージシャン 1967 - 1994)の死にショックを受け警察沙汰の事件を起こすエピソード。一方映画では、学校の舞台でフィオナの好きな "Killing Me Softly with His Song" (やさしく歌って)をマーカスが独唱するというもの。この映画版の展開がなかなか感動的だった。イケてるダンスのパフォーマンスの後、場違いな歌をボーイソプラノで歌い出すマーカスに会場からブーイングが飛び交い、このピンチにウィルが参上、助け舟を出すというもの。この心温まるエピソードの曲が、聞き覚えのあるはるか昔のネスカフェコーヒーのコマーシャルソングだったので、懐かしくて更にジーンときてしまった。早速楽譜を検索して弾いてみることにする。

 

今回は、片づけものしていた部屋から、偶然にも昔の思い出の品をいくつも発見したような気分。思いのほか読み応えのあったペーパーバックのおかげもあり、久々にイギリスの庶民の生活に足を踏み入れた感覚になり楽しんだ。

2017.6

  

♪ Killing Me Softly with His Song~やさしく歌って 

   ピアノ:アニー 

To Dance with the White Dog

(白い犬とワルツを)

Terry Kay

★★☆  英語難易度


アメリカ南部。57年間連れ添った妻を失って一人になったサムを心配して、かわるがわる子供達が訪ねてくる。やがて、彼のところに白い犬が現れるが、その犬はサムにしか見えなかった。1990年に発表され、後に映画化されたベストセラー。

The Notebook(きみに読む物語)

Nicholas Sparks

★☆☆ 英語難易度

(^^)/   お薦め

記憶を失ったアリーと、彼女に愛の物語を読みきかせるノアの純愛小説。 


あらすじと感想

年老いて施設で暮らすノアとアリー。ノアはアルツハイマーで記憶を失った妻アリーに、ノートに綴った自分たちの愛の物語を読み聞かせる。

ーーー1946年、アメリカノースカロライナ。戦争から帰還しやっと自分の家を持ったノアのところに、初恋の相手アリーが訪ねてくる。彼女は弁護士のロンと婚約していたが、ノアのことを忘れられずにいた。14年前の夏二人は恋に落ちたが、身分違いの恋に反対したアリーの母が、送り続けたノアの手紙をアリーに渡さずにいたため、お互いの気持ちを知ることができずにいた。再会したノアとアリーは愛を再燃させ、アリーの心はノアとロンの間で揺れるーーー。

記憶を失いノアのこともわからないアリーは、その物語が自分たちのことであることに気づかない。ノアはそんなアリーを愛し続けて物語を読み聞かせ、そしてあるとき、アリーは一瞬「ノア」と口にする。(以上あらすじ)

 

1996年に発表されベストセラーになり、2004年に映画化。前半は、アリーが14年ぶりに訪ねて行くとちょうど家にノアがいて、再会した初恋の相手と愛を再燃させるという、恋愛小説によくあるような展開。アメリカの自然が美しく描かれているところなども、まさに以前に読んだ "マディソン郡の橋" のようだった。 娘を心配する母親や婚約者のロンがアリーを追いかけて来てひと騒動起こると思いきや、そういった展開でもなくて・・・。 

 

ところが後半は、なるほどベストセラー小説。アリーとノアの晩年のシーンに移ると、記憶を失なったアリーを変わらずに愛し続けるノアの姿に心打たれ、ぐっとくるものがあった。年老いたノアをみて、10代の時のひと夏の恋は本物だったのだなあと、こんな風に愛したい愛されたいと、世界中の人が憧れたのがうなづける。

 

A Letter from Yesterdayより~

ノアの最後の手紙 

I am happy we were able to come together for even a short period of time. And if, in some distant place in the future, we see each other in our new lives, I will smile at you with joy, and remember how we spent a summer beneath the trees, learning from each other and growing in love.

 

Winter for Twoより~

成長した子供たちに感謝され満ち足りるノア

   For the next four hours, each of them told me how much we, the two of us, had meant to them growing up. One by one, they told stories about things I had long since forgotten. And by the end, I was crying because I realized how well we had done with raising them.

 

一瞬、ノアのことを思いだすアリー 

I say, "I love you deeply, and I hope you know that."

  "Of course I do," she says breathlessly. "I've always loved you, Noah." 

(略 

She murmurs softly, "Oh, Noah....I've missed you." Another miracle---

 

英語は平易で、あっという間に読めた。読んだ後はいつものようにYoutubeで映画を覗いてみる。細部の設定が多少違い、ノアはもう少し無骨な感じをイメージしていたが、映画では結構都会的でイケメンだった。(^^) たいていの映画は小説の圧倒的な量の緻密な描写にかなわないと感じるのだが、今回は映画もなかなか素晴らしいなと思った。小説が以外に短く、感情移入する間もなく読み終えてしまったということもあるが、映画の魅力を引き出しているのは、美しい映像とそれに絶妙に溶け込みマッチした音楽ではないか・・・。 是非弾いてみたくなったので、Youtubeを更に検索して、ピアノの楽譜を見つけた。

2017.5

 ♪ The Notebook-Main Title   (Aaron Zigman) 

ピアノ:アニー

ノースカロライナ州(Wikipediaより)

SILENCE (沈黙)

Shusaku Endo

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

キリシタン弾圧を描いた 遠藤周作の傑作 ”沈黙” の英訳版。


あらすじと感想

時代は日本の江戸初期。島原の乱の後、布教のため日本に赴いていたイエズス会のポルトガル人フェレイラ教父の棄教の知らせがローマに届き、3人の弟子が真実を探るべく弾圧の厳しい日本へ出港する。弟子のロドリゴとガルぺは、途中寄港したマカオで出会ったキチジローを頼りに、病に倒れた1人を残して長崎へ向かう。

 

上陸した二人は、トモギ村で信徒たちにかくまわれるが、役人に捕えられた村人モキチとイチゾーは踏み絵を拒み、潮の満ちる海岸で十字架に括り付けられ殉教する。ガルぺと別れて村を出たロドリゴもキチジローの密告により捕えられ、長崎で井上筑後守の尋問を受け、日本にはキリスト教は根付かないことを諭される。海岸に連れていかれた彼は、そこで途中一緒に移送された信徒の男女3人と別れたガルぺと再会する。ガルぺが棄教を拒否したため薦で体を巻かれた信徒3人は船から海に投げ込まれ、追うガルぺも海に沈んだ。

 

後にロドリゴは、寺で恩師フェレイラ神父と面会した。フェレイラも穴吊りの刑を受け、日本での布教がなぜ困難であるかを説いて、ロドリゴに棄教を促した。その夜、牢に入れられたロドリゴは、見張りのいびきだと思っていたのが実は穴吊りの刑にあっている信者のうめき声だと知らされ、彼らを解放するため踏み絵に応じ、ついに棄教することとなる。(以上あらすじ)

 

1966年に発表された遠藤周作の代表作の一つ。著者自身もカトリック教徒。史実を基にしたキリスト教の純文学で、世界各国で翻訳されている。去年2016年にアメリカで映画化され、今年2017年に日本でも公開された話題作である。今回は図書館から、1982年に出版された William Johnston の翻訳による英訳版を借りた。 すでにに日本語版を読んだことがあるものの、詳細はほとんど忘れていて読み直しとなった。

 

とにかく重かった。英単語はそれなりに難しかったが、難解な語句を飛ばし読みしても十分に重さが伝わってきた(意味を調べた apostatize-信仰を捨てる は、文中何度も使われ新しく覚えた単語)。拷問の場面は悲惨で、ホラー小説を読んでいるようだった。怖いもの見たさ(知りたさ)で、単語を一つ一つ追っていたが、英語学習という目的をはるかに超えて、日本の苦悩の歴史の一齣に思いをはせた。

 

表題 ”沈黙” は、貧しさゆえ人として扱われず、声も上げらずに死んでいくような人々に対する表現であると共に、そのような弱者の苦悩に対して神が ”沈黙” を続ける、という意味であった。苦境を前に祈るロドリゴが ”なぜ神は沈黙しているのか” と自問する場面が何度も繰り返さる。また、ロドリゴを裏切ったキチジローが場面場面で登場し、二人の関係をキリストとユダに重ねるなど、奥が深い小説だ。

 

Chapter 5 より

Lord, why are you silent?

主よ、あなたは何故、黙っておられるのです。( 遠藤周作の原文)

 

Chapter 8 より

And then the Christ in bronze speaks to the priest: 'Trample! Trample! I more than anyone know of the pain in your foot. Trample! It was to be trampled on by men that I was born into this world. It was to share men's pain that I carried my cross.'

  The priest placed his foot on the fumie. Dawn broke. And far in the distance  the cock crew.

 

その時、踏むがいいと銅板のあの人は司祭にむかって言った。踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分かつため十字架を背負ったのだ。

 こうしてし割いた踏み絵に足をかけた時、朝が来た。鶏が遠くで鳴いた。

( 遠藤周作の原文)

 

読み終わった後ネットで検索をかけると、最初に映画の情報がたくさん出てきた。映画の公式サイトを覗くと、文章で想像したシーンがリアルに映像化されていて衝撃的。音楽に当たっては、あまりに陰鬱なため思わず消音にしてしまった。とても私には大きなスクリーンで映画を観る勇気がない。後を引いてしばらく”沈黙”してしまいそうだ。そのほかキリスト教弾圧についていろいろとサイトを検索してみた。著者遠藤周作は、日本人でありながらキリスト教信者であることへの矛盾に心の葛藤があったようだ。

 

ところで、最初の章では、宣教師らはポルトガルからインドのゴアを越え、マカオに寄港したという記述が出てくる。マカオにはたまたま昨年2016年暮れに初めての旅行に行ったばかり。ポルトガル風の石畳の路地が交差する街並み(写真右)と共に、世界遺産の聖ポール天主堂に刻まれていたフランシスコ・ザビエル(写真左)を思い出した。(最初、小説中の ”Xavier ” が読めず、”ザビエル”だと気づかなかった)

2017.5

Legally Blonde 

(キューティー・ブロンド)

Amanda Brown

★★☆  英語難易度

(^^)/  お薦め

恋人を追ってスタンフォードロースクールに入ったブロンド娘が成長していくハッピーなストーリー。


あらすじと感想

エル・ウッズは、南カリフォルニア大学に通うおしゃれなブロンドガール。社交クラブ、ソロリティーの会長で、チワワの ”Underdog" を連れている。彼女は恋人ワーナーのプロポーズ目前と思っていた矢先、彼のスタンフォードロースクール進学を告げられる。そしてもっとまじめな娘と付き合いたいと、振られてしまうのだ。エルは、ワーナーを追って同じロースクールに入学したが、彼にはすでにサラという優等生の恋人がいた。派手なファッションで一人浮いているエルだが、ワーナーをなんとか取り戻したいと画策しつつ、初めてのロースクールで奮闘する。

 

やがてエルは、殺害事件を手掛けるクリストファー・マイルスから、ワーナー、サラと共に4人のインターン生の一人として抜擢される。 年老いた富豪ヘイワ―ス・バンダーマーク殺害の容疑者は、彼の6番目の妻で23歳のブルーク。彼女は、買い物依存者のための匿名の集会に参加していたため、アリバイが証明できない。一方、警察に通報したヘイワ―スの娘チャット二―は、美容院から帰宅後シャワー中だったと主張する。パーマをかけた後24時間以内は髪を洗えないことに気づいたエルは、チャット二―のうそを見抜き、彼女こそ犯人であることを法廷で暴いた。(以上あらすじ)

 

2001年のアメリカ映画、”キューティー・ブロンド” の原作。2007年にミュージカル化もされている。読後の感想を一言でいうと、とにかく楽しかった。若返った気分になって元気が出てきた。エルはお金持ちのブロンドお嬢様、おしゃれ大好で社交家という、いかにもロスから飛び出してきそうな女の子。お堅いロースクールで悪戦苦闘しつつ、一人浮いている様子がおかしい。時代はひと昔前かもしれないが、アメリカのリアルな大学生活を垣間見ることができた。

 

この手の小説の英語は、ウィットに富んだ会話や流行のファッションなど単語が意外に難しく、今回もすべて理解できたとは到底言い難い。物語は主人公エルのデートの準備のシーンから始まるが、まず、ソロリティーの寮の部屋での、エルと親友マルゴットとセレーナのたわいない女子トークにつまづいた。しかし、第一章の4ページだけ、単語の意味をあれこれ調べて話の筋がつかめると、後は順調にストーリーを追うことに成功(^^)/

 

このおちゃらけた調子で最後まで進むと思いきや、途中インターン生になってからは殺害事件の真相究明に入る。ここでもエルの魅力が炸裂し、顔の広い彼女ならではの情報も入手。そして女性の心理が分かるエルはブルークの無実を直感し、彼女をどうしても助けたいと奮闘するうち、いつしか本当に自分のやりたいことに目覚めていく。最後はエルの才能を再認識し、よりを戻そうとするワーナーをあっさりふってしまうという爽快な展開。

 

読み終えた後、Youtube で映画版を見てみた。設定が多少違う場面もあったが、エルは想像以上にはじけていて、いかにもまじめそうなサラや、結局見掛け倒しだったワーナーにうなずきながら楽しんだ。つい最近、日本でも神田沙也加主演でミュージカルが上演されていたらしい。なるほど、ピンクの衣装がキュートでエルに適役! ブロンド娘のサクセスストーリーは、元気になって気分はハッピー、アメリカ留学の参考にもなりそうなお薦めの一冊だった。

2017.5

The Alchemist 

(アルケミストー夢を旅した少年)

Paulo Coelho

★★☆  英語難易度

羊飼いの少年サンチャゴはピラミッドにある宝物を探す旅に出る


あらすじと感想

スペインの少年サンチャゴは羊飼い。ピラミッドの宝物の夢を2度見た彼は、出会ったセーラムの王の予言に従い、羊をすべて手放して得た金でアフリカへ渡る決心をする。サンチャゴは騙されて一文無しになるが、クリスタルショップで働いて再び蓄えを得、前兆に従いエジプトを目指すキャラバンに加わる。そこで、イギリス人、少女ファティマ、錬金術師らに出会い、紛争中の部族に捕えられるも奇跡をおこし、ついにピラミッドにたどり着く。宝のありかを掘り続けていると再び略奪に会い、その男は宝はスペインにあると言う。果たして、旅に出る前に立ち寄ったスペインの教会で、サンチャゴは宝を掘りあてる。(i以上あらすじ)

 

ブラジルの作家パウロ・コエーリョによる1988年発表のベストセラーで、原作はポルトガル語。世界的なベストセラーらしいが、日本語訳版も読んだことがないので、ストーリーの詳細を知らないまま英語版で挑戦することになった。

 

Alchemist は錬金術師の意。ファンタジーや冒険ものは苦手なので心配しながら読み始めたが、舞台はスペインやアフリカの砂漠というのが新鮮だ。一つのところにとどまることなく旅をして外の世界を見たいがために、親の希望に反して羊飼いになったという少年の考えも気に入った。占い師、王、アルケミスト(錬金術師)、賢者の石・・・ハリーポッターを彷彿とさせる英単語が登場する。ピラミッドの宝物が何を意味するのか知りたくてページを進めた。

 

少々とまどったのは、アフリカの砂漠で闘争中の部族に捕えられ、サンチャゴが風になる場面だ。3日のうちに自分が風になれなければ殺される。彼は砂漠や風や太陽と対話し、そして魂に到達し奇跡が起こる。ここは物語のクライマックスでもある個所なのだが・・・ 私には哲学的過ぎて重かった。この調子が続くとギブアップしそうだったが、ほどなくしてピラミッドの宝のありかに到達。予想外の展開が待っていて物語が終わった。英語自体は難しくなく、ページ数も多くないのであっという間に読めた。

 

これは、自分の夢に向かって生きていくことの大切さを説いた自己啓発本だ。夢を追うサンチャゴの旅に重ねて、その人生の教訓が小説の最初から最後まで繰り返しちりばめられている。ファンタジーテイストで寓話的な手法の小説。奥が深くて難しい部分もあったが、読み手の各々の解釈で人生の指針の一助となり得るところがベストセラーになった所以だと思う。

                                2017.5

Diary of a Wimpy Kid

(グレッグのダメ日記)

Jeff Kinney

★☆☆  英語難易度

グレッグ少年の日々の出来事を日記形式で綴った児童書。イラストも満載。


あらすじと感想

2004年のオンライン版が最初で、現在世界中で大人気のシリーズ。

グレッグは両親と兄ロドリック、小さな弟マニーと住んでいて、グレッグが middle school に入ったところから、DIARY (彼に言わせれば、JOURNAL) が始まる。この middle school は日本語に訳せば中学校なのだが、年齢でいうと11歳あたりか。(アメリカは義務教育が、5-3-4制で、小学校入学も日本より1年早いようなので、中学入学は2年早くなる計算だろうか。) お話の中のグレッグはまだまだ子供っぽくて体も小柄、声がソプラノだという記述も出てくる。丁度やんちゃ盛りの日本の小学生の男の子をイメージするとぴったり。うん、あるある、とエピソード一つ一つがほほえましくておかしくて、グレッグに愛着がわいてくる。

 

学校の劇の出し物に、先日読んだばかりの "The Wizard of OZ" (オズの魔法使い)が出てきたときはおかしかった。積極的に劇に参加してほしい母親と、できるだけ簡単な役を選びたくて "Tree" (木)になったグレッグ。セリフを覚えない生徒たちと奔走する音楽の先生。本番を見に来た家族も、花束を捨てて帰ってしまった。ページをめくるたび、くすくすが止まらない。更に、ページに満載の素朴なイラストは最高。グレッグは細くて猫背でいかにもダメっぽいし、ほかの友達もいたずら好きそうだったり、おやじっぽかったり・・・このイラストなくしてここまで笑えない!

 

200ページ強、子供の素直な表現で英語は読みやすく、スラングや汚い言葉はそれほどない。(Wimpy は、弱虫 の意) 彼と親友ロウリーとの交流や、学校や家庭での行事やトラブル体験を通して、現代のアメリカの生活が見えてきて楽しかった。そして、自分がこんなに笑える人間だとわかってうれしかった(^^)/

2017.4

The Wizard of Oz

(オズの魔法使い)

L.Frank Baum

★☆☆ 英語難易度

(^^)/  お薦め

竜巻で飛ばされたドロシーが、オズの魔法使いに会いに旅に出る冒険物語。


あらすじと感想

アメリカ、カンザス州の農場で、少女ドロシーは叔父のヘンリー、叔母のエム、犬のトトと住んでいた。ある日、ドロシーとトトは家ごと竜巻に巻き込まれ、見知らぬ不思議な国に飛ばされてしまう。エメラルドの都に住むオズの魔法使いに家に帰れるよう頼むため、ドロシーは旅に出る。途中、脳を手に入れたいかかしと、心を手に入れたいブリキの木こりと、勇気を手に入れたい臆病なライオンに出会い、様々な困難に打ち勝ち一緒にエメラルドの都を目指す。(以上あらすじ)

 

1900年に初版が出版されたアメリカの児童文学で、世界中で愛されミュージカルや映画も有名。だが、いざストーリーはというと何となく知っている程度で、いつか絵本ではなく原書で読んでみたいと思っていた。200ページ弱で24章、児童文学らしく旅の途中で次々に新しいキャラクターが登場し、あまりにたくさんのエピソードが盛り込まれていてすべてを覚えているのが難しい程だ。しかし、かかしやブリキの木こりなど、一見大人にはばかばかしいと思えるようなキャラクター達が、本の中で本当に魅力的なのだ。ちょっぴりかわいそうで情けなくて、それでいて優しくて勇気がある。それらを通して私たちに本当に大切なことは何かを教えてくれている。そして、読後には心がほんわかと温かくなり、勇気のある自分に気づく。さすが時代を超えて読み継がれる名作だと改めて感じた。

 

CHAPTER 6より~

勇気が欲しい臆病なライオン・脳が欲しいかかし・心が欲しいブリキの木こり

"Do you think Oz could give me courage?" asked the Cowardly Lion.

"Just as easily as he could give me brains," said the Scarecrow.

"Or give me a heart," said the Tin Woodman.

"Or send me back to Kansas," said Dorothy.

 

"Over the rainbow" は言わずと知れた名曲。ネットを検索したら、ジェイコブ・コーラーによる "編曲の上級ソロピアノジャズアレンジ" が楽譜付き動画で見つかったので弾いてみた。

2017.4

♬Over the rainbow ピアノ:アニー

カンザス州

LION : A Long Way Home

(ライオン~25年目のただいま)

Saroo Brierley

★☆☆ 英語難易度

(^^)/  お薦め

インドの少年がGoogle Earthを駆使して家族を探し当てるまで


あらすじと感想

インドの小さな町で、貧しくも優しい母や兄妹たちと暮らしていた少年サルー。5歳のある日、兄と電車で遠出し一人はぐれてしまい、乗り込んだ電車に閉じ込められ、眠っている間に遠くカルカッタの駅に連れていかれてしまった。家に帰る術もなく危険な街をさまようが、運よく施設に保護された彼はオーストラリアに住むブライアリー夫婦に養子として迎えられることになった。優しい夫婦の下で成長したサルーは、やがて Google Earthでインドの家族を探しだせることを知り、5歳の記憶を頼りに丹念に画面を追っていった。そしてついに故郷を探し当て、25年ぶりのインドで母や妹たちと再会を果たす。(以上あらすじ)

 

著者サルー・ブライアリーのノンフィクション。2016年に映画化され、日本では2017年4月に映画が公開され現在旬の作品だ。テレビの予告編で貧しいインドの街並みと最新技術グーグルアースの迫力に引き込まれ、原書を購入してみた。

 

最初の短いプロローグは、母親との再会の直前のシーンでいったん途切れ、その後は子供時代の回想に移って物語が進む。その最初の4ページですでに胸にぐっとくるものがあり、その後は再会のシーンに早くたどり着きたくて一気に読んでしまった。著者が貧しいインドから恵まれたオーストラリアへ渡ったのが1987年、再会したのは2012年。その離れていた25年の間にインターネットが発達し、グーグルアースやフェイスブックを駆使して故郷を探し出すという、まさに今の時代ならではの展開が本書の魅力だ。

 

さらに、ブライアリー夫妻の革新的な考えに大いに感銘した。彼らは地球上の人口増加や戦争の問題を憂い、自分たちの子供も持たずに恵まれない異国の子供を育てようと決心する。女優のアンジェリーナ・ジョリーが、養子を何人も養育していることを思い出したが、海外では人々の考えがずっと進んでいるのだなと感心する。3人の子供がいる私自身は日本の人口減少歯止めに少なからず貢献できたと思っていたが、とんでもない、世界規模で見れば人口増加の方が問題であった。著者は幸運にも大きな問題もなくオーストラリアの生活になじんでいけたようだが、おそらくもともと優しく利発な子供で、そんな彼の成長を夫妻が信念をもって暖かく見守っていったのだろうと想像する。

 

英語は聞いたことのないインドの地名や人名に多少まごついたものの、ストーリーはいたってシンプルなので大変読みやすかった。文学作品という感じはないが、ハッピーエンドで読後感もよく、気軽に読めて感動できるヒューマンドラマだと思う。タイトルのLIONは、彼の名前のヒンディー語の意味である。

2017.4